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セクハラ対策について『継続的な対策』

Qセクハラ(セクシャルハラスメント)対策について『継続的な対策が必要』といわれていますが、従業員は既に セクハラとは何か知っており、研修をしても「いまさらセクハラ防止研修なんて、 何故やるの?」という声もあります。どのようなことをやっていけばいいのでしょうか?
A従業員が「セクハラとは何か」を知らない、ということは、今やほとんどないでしょう。セクハラという言葉が注目を集めてから既に20年が経ち、言葉としてもポピュラーになりましたし、1999年に男女雇用機会均等法が施行されてからは、企業組織も研修や相談窓口の設置などを通じて、「セクハラは許さない」という姿勢を示し続けた結果でしょう。

では、セクハラ被害は減少したのでしょうか。残念ながらセクハラ被害は減っておらず、むしろ増えているといえます。例えば、平成20年度に男女雇用機会均等法について、全国の都道府県にある雇用均等室に寄せられた相談は25,478件、そのうちセクハラに関する相談は13,529件。その他の項目を大きく引き離して53%を占めています。

(ご参考:http://www.mhlw.go.jp/houdou/2009/05/h0529-2.html

また、紛争解決の援助(調停など)についても、セクハラ案件が最も多くなっています。

これは、セクハラという言葉が広く知れ渡ったことと大きく関係しています。言葉が広まった結果、行為者が自ら気づいてそれらの言動を控えたことから、職場で誰かの体に不要に触ったり、性的な話題をしたりするような「わかりやすいセクハラ被害」を目にする機会は確かに減っています。しかし、セクハラの判断基準は「被害者が性的に不快に感じた言動」であるため、「私はその言動は嫌です」ということを被害者がはっきり伝えられなければ、それがセクハラであることに周囲の人は気づきません。しかも、一般的なセクハラの認識は未だに「性的関係を迫る、体に触る、卑猥な話を職場でする」など旧型の「わかりやすいセクハラ被害」のため、そうではない言動を「そんなことでセクハラと騒ぐなんて大げさだ」と、逆に被害者側を攻め立てる風潮があります。このように、被害者の苦しみを周囲が理解しないで二重に傷つくことを「二次ハラスメント」といいますが、近年は私どもの相談窓口でも、この二次ハラスメントに苦しむ被害者の声が増えています。そして都道府県の雇用均等室にこういった被害を訴える人も、おそらく増えているのではないでしょうか。訴訟になるまでにこじれるのは、セクハラ行為そのものや行為者への嫌悪感のみならず、こうした周囲や会社の無理解に対しての憤りがあるからなのです。

つまり、今求められているセクハラ対策とは、旧来型の「わかりやすいセクハラ」へのアプローチではなく、「冗談だよ!」といいつつ繰り返されるセクハラ発言や、不意に肩を揉まれて不快に思うなどの、身近にある「見えないセクハラ被害」を知り、それを許さない職場風土をどのように実現していくのか、という点が重要なのです。そうでなければ「何故いまさらセクハラ研修なの?」といわれてしまうのは目に見えています。また、その「いまさら?」と感じる職場風土こそが、二次ハラスメントで被害者を苦しめてしまう元凶なのだ、ということを伝えていく必要があります。また、 研修の中で管理者が相談を受けた場合の対応の仕方について議論していただくのですが、たいていの場合、適切な対応を知らないのが現状です。このように管理者が二次ハラスメントを起こす可能性が懸念されます。

さらに、昨今は派遣社員を中心とする非正規雇用者も増えているため、職場のメンバーが頻繁に入れ替わることが珍しくありません。そういった人材にもしっかりと教育研修をすることが、2007年に改正された男女雇用機会均等法にも謳われています。職場で弱い立場になりやすい非正規雇用者は、被害を受けてもなかなか相談できず我慢してしまうこともあります。被害を大きくする前に、派遣先企業でも相談を受け付けています、ということも明確に伝えておかなければなりません。その他、セクハラ被害を受けないための自己防衛の仕方や、不快な誘いを上手にはっきりと断る方法など、加害行為を抑制するだけでなく被害を深刻にしないためのアプローチなど、セクハラ対策といってもまだまだできることはたくさんあります。

このように、セクハラ対策の中身は刻々と移り変わっています。今の職場で起こっていることに目を向けながら、身近にまだまだセクハラ被害があるかもしれない、ということに全従業員に気づいてもらうことが、今セクハラ対策に求められています。併せて性犯罪に当たるような酷いセクハラ被害やストーカーまがいの行為も、決してなくなっていない、ということも伝えていく必要もあるでしょう。 これらの視点を盛り込んだ教育研修や告知活動を地道に繰り返すことで、セクハラの芽を小さいうちに摘み取っていくことを目指してはいかがでしょうか。

(2009年)

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