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ハラスメントとハラスメントでないものの判断

Q最近相談を聞いた限りではパワハラ(パワーハラスメント)・セクハラ(セクシャルハラスメント)とは言えないような相談が増加しています。対応が難しく悩んでいますが、気をつけるべきポイントがあれば教えてください。
Aハラスメントとハラスメントでないものの判断というのは非常に難しく、実際に起こったことを詳細に聞いていかなければなりません。しかし最近では、聞いただけでは「どこがハラスメントなのか?」と思うような相談が増えているも事実です。

相談窓口は、何でも気軽に相談をしてもらえることが最も重要なのは間違いありません。しかし、さほど深刻な状況ではない相談、ハラスメントと言えるほどの行為が具体的にみあたらない相談などについては、相談を受けた後の対応を誤ると、問題解決どころかかえって当事者の関係がこじれてしまう場合があります。以下、対応のポイントをまとめてみました。
  1. 行為者とされる人を、いきなり加害者扱いしない
    相談者から「早く解決してください!」などと詰め寄られた結果、問題解決を急ぐあまりに、行為の深刻さや被害の重大さを考慮せずに、行為者や第三者ヒアリングなどをしてしまうと、行為者とされた人に対して、大きな精神的ショックや風評被害を与えてしまうことがあります。

    特に、「1回大きな声で怒鳴られただけ」など、ハラスメント行為とされる言動が比較的深刻ではなかったり、「じろじろ見られているような気がする」というような、あいまいな表現での訴えである場合には、行為者とされた人が被るショックや怒りは大きなものになるでしょう。その結果「こんなことぐらいでパワハラだのセクハラだの言われるなんで、冗談じゃない!」と、加害者扱いされたことに対する怒りが相談者へ向いてしまい、結果的に相談者と行為者の関係が悪化して収拾がつかなくなることも考えられます。

    まずは、注意深く相談内容を聞き、できる限り具体的な行為の内容、被害の状況などの情報を収集することです。収集した情報についてはその場で判断せず、一度持ち帰った上で、窓口担当者が複数人で客観的に判断します。本当に必要な対応が何なのか十分に検討をして、さらに当事者へのヒアリングを行った場合に予想される影響も含めて、改めて相談者に説明をして、承諾を得てから次のステップに移りましょう 。
  2. 相談者自身にフィードバックする

    相談の中には、組織的な問題解決になじまないものもあるでしょう。例えば、「先輩の指示の仕方が癇にさわる」、「付き合っていた人が、職場の他の女性と結婚したが許せない」「上司が無能でやっててられない」という相談が実際に寄せられたりします。

    本来、相談窓口として個人間の問題に介入するものではありませんし、また、職場に絡む問題であったとしても、こういった問題に担当窓口が介入すべきかどうか、その役割を事前に検討しておく必要があります。またこのような問題に第三者が介入することでかえって関係を悪化させることになってしまうことあります。

    このような相談の背後に、「相手のことは気に入らないけど、直接言うのは気が引けるので、自分が面倒なことをせずに、誰かに何とかしてもらいたい」という気持ちがある場合もあります。こういった問題は、仮に当事者ヒアリングに進んだところで問題解決するわけもなく、かえって関係を悪化させることになってしまいます。

    【相談窓口は職場の問題を誰かの代わりに解決するのが目的ではない】という前提を忘れず、組織的な問題解決よりも相談者が自分でできるはなにか、ということを中心にサポートします。そうすることで、問題解決を自分以外の誰かに頼るだけでなく「自分でも問題解決ができそうだ」という自信につながれば、相談者本人にとっても大きな転機になることでしょう。もちろん相談者が納得しない場合もありますが、窓口としてのスタンスを変えないことが重要です 。
  3. 不用意な発言に注意する

    実際に客観的なハラスメント行為が見当たらなかったとしても、決して相談者を軽々しく扱っていいということにはなりません。「そんなことは事実とは思えない」「勘違いじゃないか」などの個人的な見解からの発言は、相談者の気持ちを傷つけ、「会社は誠実に対応してくれなかった」という事実を残すだけです。このような言葉は2次ハラスメントになってしまうこともあります。

    また、それと同様に相談者が希望する解決を約束するような「必ず解決する」「あなたを守る」などという発言にも、慎重になったほうがいいでしょう。問題解決の結末は、必ずしも相談者の思い通りになるとは限りません。特に、ハラスメントとはいえないようなケースの場合は、相談者の期待と結果のギャップは大きくなります。こうなると、相談者は期待を裏切られたと感じてしまい、その怒りが相談窓口担当者に向かうことも珍しくありません。

    相談担当者の不用意な発言には、十分に注意が必要です。
  4. 対応マニュアルの整備と共有化

    相談窓口では、相談が寄せられてからその問題の終結にいたるまで、どのように対応すべきかマニュアルや対応ルールが決められていると思います。

    しかし、こういったマニュアルの中で想定しているのは、もちろんセクハラやパワハラが実際に起こっている場合であって、ハラスメントでなない相談が入った場合を想定しているマニュアルは、少ないのではないでしょうか。

    マニュアルには「ハラスメントとはいえないような相談が寄せられた場合、どのように対応するか」についても、ある程度決めておくことが必要です。「どのように対応するか、窓口のメンバーで協議してから相談者に回答する」というような簡単なルールでもかまいません。

    またそのためにも、平素から相談を受ける場合は二人体制で進めるなど、一人の判断では進めないような仕組みを作っておくことが肝要です。

(2010年)

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