アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第5回 職場内での双方向コミュニケーションの必要性

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

知っていますか これもハラスメントです

第5回 職場内での双方向コミュニケーションの必要性

「期待しているんだから、しっかりやってくれよ」、某社営業部の宮前課長は、入社6年目、ちょうど油の乗りはじめた部下の遠山さんに、しばしばこんなカツを入れた。日頃から宮前課長は、遠山さんの負けん気と自負心に裏打ちされた熱心な仕事ぶりに、確かな手応えを感じていたのだ。

数カ月後…、遠山さんは、顧客とのちょっとしたトラブルから営業成績を落とし、それを契機にこれまでの勢いはどこへやら。宮前課長から見ると、「やる気あるのか?どうなってんだ?」とイラつくことばかり。朝からぼんやりしている遠山さんを見ると、「オイッ、ぼやっとしてないで、サッサと仕事しろ!」と強い口調で檄を飛ばす。

そんなある日、宮前部長が外回りに出る直前になっても、遠山さん担当の資料ができず、「遅いっ!サッサとやれって、言ってんだろうがっ!」と思わず怒号が口をついて出た。時間ぎりぎりになって遠山さんから提出された資料を慌ただしく確認していると、ミスが目に飛び込んできた。「仕事をなめるな!」、「おれに恥をかかせる気か!」と資料を投げつけ、傍らのイスを思いっきり蹴飛ばした。

翌日、遠山さんは出勤せず、3日後に提出された某クリニックからの“診断書”には「『うつ状態』で休務を要す」との記載があった。

部下とのコミュニケーション

このケースには二つの問題があります。一つは、宮前課長が、遠山さんのメンタルクリニック通院について知らなかったこと。日頃から部下の言動や心身の状態に気を配ることは、上司に課された大切な管理監督責任です。もう一つは、部下を「こいつはこういうやつ」と決めつけ、上司の思い通りにコントロールしたこと。「頑張り屋で頼もしい部下」との期待が大きかっただけに、宮前課長は遠山さんの不調を「一時のスランプ」と勝手に解釈し、厳しい指導を続けました。が、当然のことながら功を奏さず、ついに感情を爆発させるに至ってしまったのです。

もし、宮前課長が、遠山さんの業務上のトラブルについてじっくり相談に乗り、サポートしていれば、メンタルヘルスの問題もハラスメント問題も防げたかもしれません。日頃から、一方向ではなく、双方向の風通しの良いコミュニケーションのとれる職場での関係が不可欠なのです。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2009年5月に掲載されたものです。

志村 翠/岡田 康子

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