ハラスメント相談の現場からVol.3 “逃げ道”の風通しは良いですか?

Vol.3 “逃げ道”の風通しは良いですか?

花見の宴席で管理職の知人たちのボヤキに耳を傾けていると、部下についての「指示をタイミング良く与えているのにやってくれない」、「当たり前のことを当たり前に伝えていると、『プレッシャー…』なんて言われる、どうすりゃいいの」という声が聞こえてきました。そこで思い出した話があります。

所謂デキル上司の中には、部下一人ひとりの業務の進捗状況を細かく把握し、「そこはどうなっている?」、「対処方法は?」、「根拠は?」、「見通しは?」と、声を荒げることなく要点を的確に押さえて質問やコメントを挟んでいくタイプの人がいます。Aさんもまさにこのタイプで、部下たちの間でひそかにAさんの会議を“地獄会議”、Aさんを“閻魔(えんま)さん”と呼ばれ、恐れられています。今回、“閻魔(えんま)さんに舌を抜かれた”部下Bさんから相談がありました。会議でBさんがプレゼン中、Aさんから「待った」がかかりました。細かい正確な突っ込みに一言も満足な返答ができず、延々1時間、理詰めの説教が続いたそうです。

部下の業務を把握し、問題点を指摘したり、方向性を示したりすることは上司の重要な役割です。では、Aさんの指導のどこに問題があるのでしょう。完璧を求めるAさんは、Bさんを追い詰め、“逃げ道”を塞いでいます。知識も経験も豊富な上司から正論で攻められれば、部下はまさに“蛇ににらまれた蛙”。思考停止状態に陥り、業務遂行能力が妨げられて「自分はなんてダメな人間なのだろう」と劣等感にさいなまれたり、「苛められている?」と被害意識が芽生えたり、いずれにせよ、上司との関係は悪化の一途を辿るにちがいありません。こうした悪循環を断ち切るには、部下に“逃げ道”を用意すること。それは決して言い逃れや言い訳を許容することではなく、相手の言い分に耳を傾け、まず受け入れる姿勢をもつことです。
満開の花の下、財布と一緒に心の懐も広げよう、と宴は大いに盛り上がりました。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2015.05)

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