ハラスメント相談の現場からVol.10 “出る杭”を打たないで!

Vol.10 “出る杭”を打たないで!

某企業営業チームリーダーAさんから聞いた話です。この春入社したB子さんは、米国留学で培った語学力と持ち前の積極性において新人の中で頭一つ抜きん出た存在です。入社半年経ったところで、AさんはB子さんへ会議で業務改善について提案するように指示しました。事前にB子さんのプレゼンテーション資料を見せられたAさんは驚いたそうです。なぜならB子さんは、“ルーティン業務の無駄”を細かくリストアップし、改善策を提示していたのですが、従来のやり方への痛烈な批判とも受けとれる内容だったからです。Aさんは「新人の立場をわきまえるように」、「チームの和を大切に」と注意したところ、B子さんは「業務改善につながると信じて提言しようとしているのに、いったいどこが間違っているのですか」と泣きながら抗弁。「つくづく新人指導って難しい…」とAさんは嘆息しました。

この春入社したばかりの新入社員にとって、半年経過した10月は一つの節目です。実務を必死で覚え、職場の人間関係を構築することに無我夢中の第一ラウンドを戦い終えたばかり。ようやく周囲を見渡す余裕が生まれて、自分の立ち位置を確認し始めるこの時期には、さまざまな課題が見えてきます。

B子さんの場合、やる気が空回りしてしまい、上司からガツンと打たれてしまいました。思えば、B子さんの業務遂行への意欲は社会人としての大切な資質であり、新鮮な目の付け所や行動力は組織にとって貴重な財産です。問答無用で “出る杭”を打ってしまうのはもったいないかぎり。組織の成長の芽を摘むことになるばかりか、新人の意欲を喪失させ、能力発揮の好機を奪うことになりかねません。

B子さんはその後Aさんと話し合う中で、持ち前のポジティブな資質へ褒め言葉をもらうとともに適切な表現方法の指導を受け、崩れかけた態勢を立て直すことができました。
第二ラウンドのゴングを鳴らす前に、上司や先輩はセコンドとして十分な支援を行いましょう。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠(2015.12)

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