ハラスメント相談の現場からVol.20 “叱る”も“責める”も逆効果

Vol.20 “叱る”も“責める”も逆効果

“パワハラ加害者”とされる人たちと話す機会があり、興味深く思ったことがあります。まず、全員が全員ではありませんが、皆さん極めて責任感が強くて真面目。業務遂行に懸ける思いは強く、かつ自他ともにミスを許さない完璧主義傾向ももっています。従って、部下がミスした時の失望と怒りは殊の外大きく、つい「公衆の面前で大声で叱責してしまった」り、「別室へ呼んでコンコンと長時間説教した」りしてしまいます。いずれの場合も、失敗を責め、原因を追究する、という一連のプロセスに共通点が見られます。ご本人の弁として、「二度と同じ失敗を繰り返させてはならないから」、「ミスした相手に非があるのだから、叱責するのは当たり前でしょう」というのも不思議なほど共通しています。

大事な顧客からミスを指摘されトラブルになっている場合、「一体どうしてこんなことになったんだ?!」とミスした部下へ質問(正確に言うと、質問ではなく叱責)することは問題解決につながりません。一刻を争ってやるべきことは、現状を具体的・客観的に把握し、顧客の不満や怒りを最小限に抑えて、次善の策を検討し、実行することです。まずは、ミスした当事者から情報を引き出し、一致協力して事に当たることが必要不可欠なポイントです。対立関係、ときに敵対関係となってしまっては、問題解決への一歩を踏み出すことは不可能でしょう。野球の試合中、大事な場面で簡単なフライを落球してしまった外野手に対し、「何で落っことすんだよ?!」とその場で駆け寄って恫喝しても無意味なのと同じです。無意味なばかりか、個人はもとよりチーム全体の士気が下がりかねません(実際、そんなことをするコーチも監督もいませんね)。今後、同じミスを繰り返さないよう防止策を考えるのは、事態が収拾し、落ち着いてから冷静に話し合って進めるのが効果的でしょう。
部下育成には“叱る”も“責める”も逆効果、とつねづね心しておきたいものです。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2016.10)

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