ハラスメント相談の現場からVol.24 “良かれと思って”がハラスメントに

Vol.24 “良かれと思って”がハラスメントに

暦の上では春、と恒例の書き出しに続くのは、まだまだ冷気に首をすくめ…、と思いきや、今年は春の気配濃厚です。空気が温むにつれ花粉も元気に飛び散っているようで、お困りの方も多いのではないでしょうか。

“お困りごと”と言えば、先日、某企業の社内窓口担当者宛てにこのような相談が入ったそうです。「技術部門で有期契約社員として働いているが、先日上司と面談した際、しきりに新たな資格取得や自己啓発セミナー受講を勧められ、『早く辞めろ』と言わんばかり。クビを切られるのでは…」といった雇用不安を訴える内容です。
上司はもともと歯に衣着せずズバズバ物を言うタイプで日頃から部下は意見を言いにくく、実際、今回の上司の発言の意図がどこにあるのかは確認できなかった、とのこと。窓口担当者が別の機会にそれとなくこの上司から話を聞いたところ「本人のために良かれと思い、将来のキャリアにつながるアドバイスを積極的にしている」と胸を張ったそうです。担当者が、「一般的に、その状況下で上司の良かれと思ってのアドバイスは裏目に出ることが多い」と伝えて自粛を促しましたが、これに似た話は枚挙に暇がありません。「そろそろ結婚したらどうか」、「子供は早く作った方が良い」など、古くは “良かれと思ってのアドバイス” として堂々と語られていたことが、今や “ハラスメント” という不名誉な称号を与えられているのは周知のことです。

一体、何がいけないのか?を考えてみると、第一に、“良かれと思って…”の判断の主体が受け手(相手)ではなく、発信者(こちら)だということ。加えて厄介なのは、“相手に良かれと思う”行為自体、善意の表れであり何ら非難されるものではない、という主張が一見まかり通る点にあります。しかし実際には、役に立たないどころか、“大きなお世話”や最悪の場合“ハラスメント”になってしまう発言は、言うまでもなくアドバイスとは異次元のものです。

相手が欲しているアドバイスをするには、相手の期待や不安をしっかり汲み取る関わりをもち、ニーズを十分理解すること。これらの下地作りは不可欠です。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.02)

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