ハラスメント対策最前線風通しの良い職場づくり -CSR活動の一環として-(3)

対話の創出とファシリテーターの役割

近年、多くの企業が顧客、地域住民など、さまざまなステークホルダーとの対話を通じ、CSR活動の改善に努めています。また、CSRの社内浸透や組織活性化の観点から、ステークホルダーの一員である従業員との対話が注目を集めるようになってきました。

対話とは、共通の理解、合意を広げる話し合いのことです。今回は、前回の「風を通す」ためのステップでご紹介した「対話の創出」について、ファシリテーターとしての推進者が担うべき役割をお話しします。

①安全な場をつくる

双方向で率直に話し合うことができる対話の条件には、「自由に何でも言える雰囲気」「立場の対等性」「共感を持って聴く態度」「自分の考えを明らかにすること」などが挙げられます。緊張した雰囲気をほぐして話しやすい環境をつくるアイスブレイク(自己紹介、コミュニケーションゲームなど)、誰もが安全に話せるためのルールづくりなどから、本題に向けて意識をつなげていくとよいでしょう。

②促進する

対話には信頼関係の醸成が欠かせません。参加者の間で、信頼関係があまり築かれていない場合や、対話に慣れていない参加者がいる場合には、発言量が少ないことによる「沈黙を恐れない勇気」や、「どんな意見も一旦は受け止める」という姿勢が大切です。また、権限の強い参加者や極端に発言量の多い参加者に対するパワーコントロールも必要になるかもしれません。全員を尊重しつつ公平に応対することで参加者が発言しやすくなり、多様な意見が出るようになるでしょう。

③場を読む

多様な意見が出始めると、対話の流れがわかりにくくなり、拡散することがあります。ファシリテーターは、その場で起こっていることを、発言内容(コンテンツ)と全体の流れ(プロセス)から把握し、的確に対応することが求められています。曖昧だけれど大切そうな意見を確認したり、対話の中で参加者にコミュニケーション手法を学んでもらうことも可能です。例えばIメッセージ(私は・・・という文章)に置き換えて話してもらう、相手の話が終わるまで耳を傾けてもらうといった介入はその場の流れを変えていくのに役立ちます。

④方向性を示す

最終的には、どのような対話だったか、どのような意見が出たかという話し合いの結果が活かされるような流れを作ることが大切です。もし具体的な活動や計画などの案が出た場合には、日程や役割などを決めるというところまで促してみてはいかがでしょうか。

おわりに

対話は会社と従業員との間につながりを生み、従業員同士の信頼関係を築く土台となります。参加者にとっては、自分の考えを話す練習になり、自分の考えが相手に伝わり、相手の話をしっかり聴くという双方向コミュニケーションの経験により視野を広げることができます。そして、このような個人の成長と関係性の改善が風通しの良い職場を育み、全社的なCSR活動に良い影響を与えていくことでしょう。

(2013年9月)

プロフィール

村松 邦子
経営倫理士

株式会社ウェルネス・システム研究所 代表取締役
NPO法人GEWEL(ジュエル)代表理事
一般社団法人経営倫理実践研究センター 主任研究員
筑波大学大学院修士課程修了(人間総合科学)

経歴

グローバル企業の広報部長、企業倫理室長、ダイバーシティ推進責任者を経て独立。
「健幸な社員が健全な組織をつくる」をテーマに、人財組織開発と連動したダイバーシティ、企業倫理、CSR推進の支援・普及に取り組んでいる。
経営倫理実践研究センター主任研究員、日本経営倫理士協会理事、日本プロサッカーリーグ(Jリーグ)理事。

著書(共著)
「人にやさしい会社~安全・安心、絆の経営~」(白桃書房、2013)
「三方よしに学ぶ 人に好かれる会社」(サンライズ出版、2015)

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