海外ハラスメント問題第4弾 パワハラ上司を調教する!ローラ・クロショウさん(その2)

第4弾 パワハラ上司を調教する!ローラ・クロショウさん(その2)

今回は、前回に引き続き、ローラ・クロショウさんが創設したボス・ウィスパリング・インスティテュートとコーチングメソッド「ボス・ウィスパリング」についてお伝えします。

ボス・ウィスパリング・インスティテュート(Boss Whispering Institute)

【ミッション】
ボス・ウィスパリング・インスティテュート(Boss Whispering Institute)のミッションは、いじめやハラスメントの行為者に起因する職場での苦痛を少なくすることにあります。事業主の問題解決を支援できるように、行為者を対象としたコーチングメソッドを人々に伝え、ボス・ウィスパラー(Boss Whisperer)と呼ばれるコーチの育成をしています。

【職場のいじめの影響について】

職場における行為者の言動は対人関係で摩擦を生みます。部下、同僚、時には自身の上司にさえも不快感を与え、従業員のモチベーションや組織の生産性をどんどん低下させます。職場での彼らの態度は、人をいらつかせるものを初め、いじめのような破壊的なものまで広範囲に及びます。

いじめやハラスメントが行われているとき職場に表れる症状としては、たとえば、

  • 特定の個人と同僚たちとの関係について苦情が入ってくる
  • パワハラリーダーの部署から配置換えをしてもらいたいというリクエストがある
  • 優秀な従業員がやめていく
  • モラルとモチベーションが低下する
  • ハラスメント訴訟が起きた、もしくは起きる見込みがあるなどが挙げられます。

【コーチングメソッド:ボス・ウィスパリング】

ボス・ウィスパリングは行為者に特化したコーチングメソッドです。
行為者は一般的に自分で自身の言動に気づいておらず、周囲に与えるインパクトがそれほどでもないと思っている傾向があります。
ボス・ウィスパリング・インスティテュートは、医療・司法・教育業界を含む、400人以上の行為者(多くは管理者や経営者)を対象とした調査に基づき、いち早く自身の言動が周囲に与えるインパクトに気づき、破壊的でないマネジメントスタイルを身につけることを支援します。

このプロセスは、内密に行われます。現場(職場)で最初に現状把握を行い、続いて、対面もしくは電話でのコーチングセッションを行います。ボス・ウィスパリングは通常8~10回のセッションで終了しますが、3回目あたりから明白な効果が表れます。

ボス・ウィスパリングは、行為者に気づきを与え、また、彼らにとって心底やりがいのあるメソッドです。行為者たちは、事業主が自分を左遷・解雇することなく、コーチングを提供し、助けてくれたことに感謝の念を抱きます。同僚たちの苦悩は止まり、従業員は元行為者の変化や組織が介入した事実を前向きに受け止めます。最終的に、事業主は、職場でのいじめやハラスメントに起因する人員削減、訴訟、組織に対する嫌悪感などのリスクを除去し、リーダーシップも維持します。

ローラ・クロショウさんのインタビュー動画

Canadian HR Reporter より

以下に内容を和訳しました。一部聞き取れないところは除いております。

-ローラ・クロショウさんに職場でパワハラ上司とどのようにつきあえばよいのか伺いました。

行為者のコーチングや調査研究にたずさわってわかったことは、彼らは優秀な人材として見られることに神経を使っているということです。われわれ、誰しもそういう部分はあると思います。しかし、彼らは、障壁がたちはだかりそうなとき、例えばプロジェクトの進みが遅い、物事が自分の思うようにスムーズにはかどらないときなど、大変な不安にかられます。そうした彼らの不安への対処法が、他者に対して攻撃的になる、ということなのです。

-人事部は介入にあたって何ができるのでしょうか。

確かに人事部にできることは介入です。勤務評定は面談で行いますが、職場での振る舞いについても面談は有効であると考えます。しかしながら、面談を行いますと、人は通常、受け入れ難い状況を認めようとしません。
「打ち合わせの席で部下に怒鳴ったんですか?」「クビにするぞ!って言ったんですか?」とたずねても、「そんなことはやっていない、言っていない」と言います。
私がお伝えしたいのは、やった、やってないといったひとつひとつの事象を列挙するよりも、あなたと職場で付き合うにあたって、ネガティブな感じ方をしている人がいる、という事実を示すということです。

-人事部はどのようにパワハラ行為を規制し、処置すればよいのでしょうか。

私は業績と就業態度とを、分けて考えるべきだと思います。企業は悪い業績への対応にはそれほど苦労しません。就業態度への介入でも同じ考え方を用います。この状況を存続させるわけにはいかない、と明言するのです。
一方で、行為者たちは自分で方向転換ができません。どうしたらいいのかわからないのです。そのためコーチングによって、自分がどのように見られていて、それがどのようなことを招くのか理解を深め、それを除去するために戦略を立てていきます。そのようにして有害なマネジメントスタイルの転換を図っていくのです。

-人事部は、上層部に介入の意志を持たせるにはどうしたらよいのでしょうか。

しばしば上層部は優秀な行為者への介入には抵抗があります。
そのため、仕方がないとそのままにするか、解雇にするかの二択に迫られます。しかし、もうそのような必要はないのです。行為者たちには介入が可能ですし、行動の転換を促すことができます。問題は、介入もせず当人の性格上の対立、としてしまうことです。ハラスメントの行為者が複数人に及ぶ状況になると、もはや性格上の対立、とも言っていられなくなるのではないでしょうか。そして従業員たちも、会社はこの状況をなんとも思っていないんだ、私たちのことなんてどうでもいいんだ、と思い始めます。介入しないというのはリスクを伴うことなのです。

Expanded Books より

以下に内容を和訳しました。一部聞き取れないところは除いております。

-なぜ、ボス・ウィスパラーとして知られるようになったのですか?

私はマネージャーをなだめる、落ち着かせるといったことをしています。
一般的に行為者とされる人々はいじわるで残忍で、といった印象をもたらしますが、
私が発見したのは、多くの場合、職場を離れるととてもいい人で、職場では乱暴な熊のようになる、ということです。

-著書(「Taming the Abrasive Manager」)の中で、怖れについて書かれていますね。

それは、格好悪い、格好悪いと思われたくない、という怖れです。行為者たちは、こうしたことに遭遇しそうになるとそれらを取り除こうとするのです。

-行為者たちの特徴は何でしょうか?

行為者の特徴として、第一には、心配、決め付ける、オーバーリアクションなどがあります。次にはコントロールのしすぎ(すべてをコントロールしようとする)で、押し付けがましく、細かいことまで指示すること。三番目は、言ったとおりにしろ!じゃないとどうなるのかわかっているのか!といった脅しです。そして四番目が人前で恥をかかせることです。人前で怒鳴る、名指しで中傷するといったことがあります。
五番目が私は何でも知っている、何をしなければいけないかは私にはわかっている、余計な口を出すなといった、人を見下す態度です。

-行為者たちはどのようにして、そうしたマネジメントスタイルを身につけたのでしょうか?

そうですよね。私も同じことを考えました。わかったことは、彼らの若い頃の経験が影響しているということです。人がどのように人を扱うかは、自分がどのように扱われたかを通して学びます。
さかのぼると家庭などでひどい扱いを受けたケースが多いです。あるいは、若いころに険悪な職場にいたことがあり、そうした職場でマネージャーを見て人を管理する方法を学んだ、ということなどもあります。

-なぜ企業は介入をしないのでしょう?

行為者への介入について人々が恐れる理由は二つあります。より職場が悪化するかもしれない、何も改善されないかもしれないという恐れ、もうひとつは、どうせ改善されないのだから介入する必要がどこにあるのだ?と多くの組織がさじを投げていることです。
「Taming the Abrasive Manager」という本でお伝えしたいのは、パワハラ上司など、行為者は変われます、ということです。組織はハラスメントを容認してはいけません、それが起きたら代償を払わなくてはいけないのです。

-どのように、行為者たちにもっと人を尊重するように伝えたらよいのでしょう?

組織は、行為者にわかりやすく説明し、彼ら自身に彼らの態度を認識させることが大切です。例えば、具体的なフィードバックを与えれば、自らの行動に盲目的でいられなくなります。また、処置についても明示することで、これ以上この状況を続けられないんだ、と認識をあらためさせるのです。彼ら自身の態度が自らの職を失うことになりかねないと理解させることが大切です。

-行為者は変われるのでしょうか?

行為者は変われます。自分のしていることがわかった途端、恥ずかしくなるのです。
なぜなら、仕事では有能であっても、対人関係においては無能であることを思い知らされるからです。彼らは決して無能とは思われたくないのです。

-自分が行為者かもしれないと思っているマネージャーに、何かアドバイスはありますか?

職場でいかにもいじめっ子のようなあだ名がついているようであれば、それは予兆かもしれません。もっと対人関係を学んだ方がいいんじゃない?と言われたことがあるのであれば、それはひょっとすると行為者かもしれない、という示唆でしょう。

-最後にメッセージをお願いします。

職場でのいじめやハラスメントにきちんと取り組む時代になっていると思います。
そもそも私たちは職場で苦しんだり、耐えたりするべきではないのです。
何も、愛想よくしなさいと言っているわけではありません。
職場でお互いに敬意を持って接するということなのです。

ローラ・クロショウさんの主な著書

Taming the Abrasive Manager: How to End Unnecessary Roughness in the Workplace / 2007(パワハラ上司を調教する:職場に不要な乱暴をいかに終わらせるか)
Workplace Bullying: Symptoms and Solutions / 2012(職場のいじめ:その症状と解決策 共著)
この特集内容に関するご質問やご要望などございましたら、お気軽にお寄せくださいませ。

レポーター クオレ・シー・キューブ 岩崎

(2012年10月)

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