ビジョナリー対談株式会社総合コンサルティングオアシス代表取締役 大江 建氏

Vol.02 株式会社総合コンサルティングオアシス代表取締役 大江 建氏

新規事業立ち上げや商品開発を成功させる研究、コンサルティングに長年携わり、時代の変化を見つめてこられた大江 建氏。DIW塾での体験や実践に学び身につける講座は、受講者からも好評です。
これからの事業展開に必要とされるものと女性活躍推進が交わる点を、クオレ・シー・キューブ代表岡田康子がお聞きします。

溢れるパワーを持つ女性たち

岡田康子 クオレ・シー・キューブ(以下、岡田):
大江先生とはもう長いおつきあいをさせていただいております。1988年に社内起業研究会を一緒に始めましたが、当時まだ社内起業と言う言葉もない時代でした。それ以後ずっと新事業や商品開発を如何に効果的に世に出すかという研究とコンサルティングを行ってきました。それらの今まで開発してきた事業開発の手法が女性活躍推進に使えないかと思って昨年からDIW塾を一緒に推進させていただいております。塾の第一期を終えてどのようなご感想をお持ちですか?

大江 建氏(以下、大江氏):
何と言っても女性達の熱気、パワーに驚きました。今まで温存してきたエネルギーが一気に噴き出した感じがありますね。そういっては語弊があるかもしれませんが、男性はこのような経営についてのセミナーを行っても既に聞きかじった情報があって、入っていかないんですが今回の方たちはとても真剣に受け止めてくれました。私はいつも学生たちに「知らないことで飯を食え」と指導してきましたし、自分自身も知らないこと新しいことにチャレンジしてきました。そういう意味では今の人たちは知識がない、経験がないことに対して不安を感じる人が多いですね。変化の激しい時代にそういうメンタリティでは生きていけません。その点、知らないこと恥と
思わず、どんどん行動する彼女たちの姿勢はまさに新事業向きだと思いました。

事業を創りだす女性を育てるDIW塾

岡田:
そうですね。このプログラムではまず自社の分析を行い、それぞれに事業アイデアを考え、ビジネスモデルを描き、マーケティングや自社資源を洗い出して事業の構想を練る。そこで立てた仮説の検証をおこなって最終プレゼンテーションとなっていったわけですね。その間に皆今までにない視点でものを考え、外部の人と接触し、チーム内での葛藤を処理し、コミュニケーションをとる。繰り返し行うことでプレゼンテーションスキルも高めるといった盛り沢山な経験をしながら目を見張るほどの成長をしてきました。今回は3チームのプレゼンテーションがありましたが、それぞれ会社に持ち帰って社内発表をおこなっているようですけれども、残念ながら本当に事業化になったテーマはないようですね。

大江氏:
俗に「新事業の成功は千3つ」と言いますが、事業化できるものはほんの僅かです。だから私たちは「失敗してもいいからチャレンジ、学習する」ことが大事。ただし、「致命的な失敗は避けよう」というコンセプトで新事業のコンサルティングを行っています。今回もプレゼンまでもっていったことがとても大事で、それも机上の空論ではなくターゲット顧客からヒヤリングを行い、協力してもらえそうな企業の調査も行っています。そういう意味では相当ブラッシュアップされた事業提案だったと思います。それに事業開発の手法と姿勢を実践しながら身に着けたことは大きな意味があると思います。

岡田:
そうですね。ところで今回活用した手法のひとつであるビジネスモデルキャンバスですが、今この考え方が世界的に活用されているということですが・・

大江氏:
ええ、このビジネスモデルキャンバスは事業モデルを1枚の絵に表す方法なのですが、それによって簡単に事業の全容を理解したり、モデルを組み替えたりすることが可能です。今までもビジネスコンテストはよくおこなわれていましたが、それはビジネスプランを発表していました。でもそれは提案するものも評価する側も嘘だとわかっていたんです。嘘と言ってはなんですが、まあそん
な細かいことまではわからない段階で損益計算や投資回収計画を書いていたんです。でも、もっとも重要な顧客ニーズや顧客とっての価値、本当に購入してくれるのかなどが検証されていなかったんですね。今この様な仮説の検証を評価する方法を使ったビジネスモデルコンテストが世界規模で行われています。今年もアメリカのユタ州プロボ市で第4回世界大会が行われましたが、日本からも各大学から勝ち抜いてきたチームが参加しています。日本での大会は私が主催していますので、今後もDIW塾のメンバーにも参加できるようにしていきたいと思います。

グローバルで求められるデザイン思考の人財

岡田:
ところで、今ビジネススクールで学ぶ内容がだいぶ変化してきていると聞きますが……

大江氏:
そうです。少し乱暴な言い方をすれば、そもそもビジネススクールは生産効率性を高めるとか、大量に効果的に販売する方法を教えていたわけです。どこかの会社でうまくいったケースを勉強するというのがパターンでした。その基本コンセプトは客観的で、論理的、そしてシステム思考だったのです。しかし、これからは感覚的情緒的なアプローチ、デザイン思考が主流になり始めています。また知識は誰でもインターネット上で獲得できますので、より体験的、実験的な教育が必要とされてきています。

岡田:
左脳的な思考に加えて右脳思考も大事ということでしょうか。実は管理者を対象にしたハラスメント防止研修で、明らかに問題のある社員のDVDを見せて「この社員を見てどう感じますか」と言う質問をしますが、多くの男性がこの質問に答えられないんです。感情に対して気づきがないんですね。肩こりと言う言葉を知らないと肩がこっていても自覚がないのと同じです。自分自身の感性、感情に非常に無頓着だという感じがします。それに比べて、女性の方が感性や感情を抑圧するトレーニングを受けていませんので素直に感じる傾向があると思います。これからのビジネスは女性に任せたほうがよさそうですね。

大江氏:
それに私は10年間アセアン10か国で各国の大学を通して起業家を育成する教育を行い、そのための教材を作ってきました。今年からそれが発展して日本アセアン起業家教育協議会が発足しています。アセアンと日本がともにビジネスで協力し合っていこうとしています。
これからの事業展開は国内だけでは限界があります。最初から市場も生産もアセアンを一体としてビジネスモデルを構築していく必要があるでしょう。その面からも一般的に語学力、コミュニケーション力の高い女性が活躍する場があると思っています。

魅力的な男性が増えることそれが、ロールモデル

岡田:
そうですね。私もこれからの女性活躍推進を考える場合、今までの企業活動と別の舞台を作らなければならないと思っています。だって男性が作り上げてきたビラミッドの組織階層の中にいきなり男性を飛び越えて女性管理職を30%にと言っても無理があります。割り込みですものね。男性からの抵抗があるのは当然だと思います。不満や矛盾が新たなハラスメントの発生要因になってしまいます。ならば、別の事業を立ち上げ、違う組織を作り、違う働き方をする。それによって企業に直接稼げる女性達を育てることだと思います。
ところで、大江さんは元祖イクメンではないかと思っているのですが。

大江氏:
そうですね。今娘が25歳になりますが、25年前に子育てをしていました。私の妻は外資系の割に、会議や接待も多かったんです。私は当時は独立したコンサルタントだったので、時間のコントロールができましたので子供との付き合う時間が多く取れました。私自身は自由に好きなことをやっていたいと思っていましたので、そのためには妻に安定した仕事をしていてほしいという自分の都合もあったのです。

岡田:
とはいえ、奥様も仕事をバリバリしながら趣味も楽しまれておられますし、夫婦それぞれがきちんと稼ぎ、自分自身の生き方を楽しんでいますね。それがとても素敵ですよね。
よく女性活躍推進の課題というロールモデルがいないと言いますが、それは女性のロールモデルがいないと言うだけでなく仕事も私生活も素敵に楽しんでいるモデルがいないということなのではないでしょうか。そういうリーダーにはこれらからは若い男性もついてきませんよね。だから女性活躍推進のためには仕事も私生活も楽しむ男性が増えることが大事だと思うのです。そのための時間を作るには女性にも多くの仕事を担ってもらわないと、そういう時間ができませんよね。

大江氏:
そのとおりですね。

岡田:
本日はありがとうございました。また今年もDIW塾のご指導をよろしくお願いします。

(2014年7月)

大江 建  早稲田大学参与株式会社総合コンサルティングオアシス代表取締役

元早稲田大学経営専門大学院教授(実験経営学)。元早稲田大学インキュベーションセンター長。「新規事業論」「社内ベンチャー論」「起業家教育論」を研究。新規事業立ち上げのコンサルティングや社外監査役、取締役業務などに従事。
著書:「なぜ新規事業は成功しないのか」(日本経済新聞社)、「成功する事業・失敗する事業」(日本能率協会マネジメントセンター)、「儲けの戦略」(東洋経済新報社)ほか

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