ハラスメント相談の現場からVol.61 不安への最善策

Vol.61 不安への最善策

昨年末以来、徐々に世界中に広がり、加速のスピードが緩むことなく収まる気配の一向に見えてこない新型コロナ禍。国によっても地域によっても被害や生活への影響の程度は異なりますが、誰もが逃れることのできないこの度のパンデミック状況は、私たちが不安や恐怖という痛みを分かち合い、現状打破に向けて「共にできることは何か?」について知恵を絞り、助け合って行動する時にある、ととらえることもできます。一方で、世界中の人々が同じ災禍に直面する中で多くの国々が事実上“鎖国”を選択せざるを得なくなっている今、“グローバル” という言葉がこれまでになく切実に実感されるのは皮肉なことです。

企業によっては、すでに社員にテレワークや時差出退勤を奨励したり、入社式をとりやめたり、ウェブ上で会議やセミナーを実施したり、不要不急の飲食の機会を制限したり…など、さまざまな対策を講じ始めています。そうした非常時下、「イベントの開催/中止の判断に関しての情報が回ってくるのが遅く、今は何を優先すればよいのか分からない」、「一時帰休や自宅待機などの対策に伴って給与保障はどうなるのか知りたい」などの相談の声が挙がってきています。とりわけ非正規雇用の人たちにとっては、情報の洪水の中で自分だけがぽつんと孤島に置き去りにされているような孤立感・心細さや生活面、とりわけ経済的な不安が募り、誰にも相談できないまま日頃から感じている職場での不公平感、不平等感が膨れ上がっているのではないかと懸念されます。

今、確実に明言できるのは、世界中どこを見渡してもこの問題に正解を出せる人はいないということです。不安視される事柄について回答をもたない、分からないにもかかわらず、軽々に約束したり保証したりすることは不安払拭の助けにならないばかりか疑心暗鬼を生んでしまうということになります。かと言って、明確な方針が出るまでひたすら放置するというやり方は、憶測や風評を蔓延させ、不安のオーバーシュートを招いてしまいます。新型ウイルスという大きな共通のストレス源に加え、対人関係における不信や対立というさらなるストレス源を積み上げてしまう不幸は断じて避けねばなりません。

不安な気持ちを傾聴・吐露し共有すること、そして「今は分からない」、「先が見通せない」ことも含め、現状で伝えられることを糊塗せず誤魔化さず誠心誠意こまめに情報提供すること。目に見えない屈強な敵と戦うために人間ができる、これが最善の策なのではないでしょうか。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2020.04)

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