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ハラスメント相談の現場からVol.62 彩り豊かなインナーダイバーシティの森へ

Vol.62 彩り豊かなインナーダイバーシティの森へ

食品関連会社で営業部長を務めるA氏は、今月からテレワークに切り替えました。3週間を過ぎて、ようやく自宅で仕事をこなす生活に慣れてきたところです。そこで、日頃から筆まめなA氏、日々の雑感を手帳に綴りはじめました。

「毎日毎日、会社で、客先でいったい何人と顔を合わせていただろう。食事もつねに誰かと一緒で、ほとんど一人になる時間はなかった。小さい頃からネアカと言われ、自他ともに認める楽天家。元気だけが取り柄と思っていた。それがどうだ。外出を最小限にとどめ部下とはオンラインミーティング、接するのは家族だけ、という生活になると知らない自分が見えてきた。意外だったのは、小心者で心配性だったこと。IT環境にちょっとでも不具合が生じたり、部下の体調が悪いと聞こえてきたりすると、あれこれ悪い方に想像し不安で落ち着かなくなる。どっしり構えて悠揚迫らぬ態度はどこへ? 他にも意外だったことはある。家事に興味を持ったこと。何年ぶりかで出かけたスーパーでの買物、昔とった杵柄の簡単な料理も楽しいし、何より家族からの評判が良いのが嬉しい。」

ところで、私たちは自分のことをどれほど知っているでしょうか。ダイバーシティという言葉は今ではすっかり耳慣れたものになりました。それではインナーダイバーシティはどうでしょうか。インナーダイバーシティとは、私たち一人ひとりが持っているさまざまな特性―たとえば性別や年齢などの属性/夫や妻、親や子、学生、社会人などの社会的役割/体質や性格や考え方、などなど―を包括的に説明するものと考えています。当然のことながらインナーダイバーシティの中身については誰しも、自分でも知らない、分からない、気づいていない特性は沢山あるでしょう。

A氏を例にとると、「エネルギッシュで外交的で周囲から頼られる第一線のやり手営業マン」という自己理解があり、「強くありたい」「頼られる存在でありたい」との意識が、本来もっている繊細で傷つきやすい性格(心配性、思いやり)を背後に追いやっていたかもしれません。また、営業マンとしてのアイデンティティ一色に塗りつぶされる生活ゆえに、夫、家庭人としての役割を実感・発揮する暇がなかったことは確かでしょう。ふだん気づいていない自分、知らない自分を発見することは、A氏の例を俟つまでもなくさまざまな事象への対応力を広げることになります。

灯明の見えないこの時期こそ、自らの内に広がるインナーダイバーシティという彩豊かな森へ分け入り、未知なるさまざまな自分と出会うチャンスにしても良いのではないでしょうか。

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