ハラスメント相談の現場からVol.64 ハラスメントフリーへの王道

Vol.64 ハラスメントフリーへの王道

コロナ禍が拡大、縮小の波を繰り返し長期戦に突入する中、予てから議論されてきたパワハラ防止法が6月1日に施行されました。働き方の変革という風も勢いを増し、複雑化する社会状況下での働きやすい職場、すなわちハラスメントフリーな職場とはどういうもので、どのようにすれば実現可能なのでしょうか。企業(船)は風をいっぱいにはらんだ帆を上げ、いかに大小の波を巧みに乗り切るか、舵取りにいっそうの工夫が求められています。“パワー・ハラスメント”という言葉を最初に提唱した弊社への期待もひしひしと感じる今日この頃、8月2日にハラスメントフリーの日を迎えるにあたり、基本の心構えを考えてみたいと思います。

在宅勤務を推奨する企業が増え、オンラインでのやり取りにおける新たな“トラブル”を憂慮する声が上がってきます。テレワーク中は、これまで職場の緩衝材として重要な役割を担っていた“雑談”が難しく、空気を読むことも容易でないため、通常業務時よりも上司-部下間の心理的距離が広がっています。実態がつかみにくく、実感のわかない“場”への不安は上司も部下も同じであり、双方の間には一方的なイメージ(思い込み)で不安を払拭しようとするバーチャルな関係性が生じているのではないでしょうか。たとえば、悪い例を挙げると、「(上司)きっと怠けているに違いない」、「(部下)どうせ信用されていない」など。誰もが不慣れな環境にストレスを覚えるこうした状況にあって、上司が自らの行為について「これはハラスメントになるのだろうか?」と推量することに腐心していてはますますイライラが募り、部下をはじめとした人間関係や業務に悪影響を及ぼしてしまうでしょう。『ハラスメントをしないための注意事項』のリストばかりが嵩高くなっていくようでは管理監督者のストレスは増すばかりです。古くは風紀委員、今は高性能監視カメラの数を増やすことは組織の中にせっせと“疑心暗鬼”の種まきをするようなもの、ますますハラスメントフリーな職場は遠のいていきます。

十分な準備期間もなくなだれ込んだテレワークを心地よい働き方のモデル形態にするには、組織が一丸となって「何をやってはいけないのか」という注意事項を集積するのではなく、「どうすればより気持ちよく働けるのか」意見を出し、議論し合う機会を提供することが重要なのではないでしょうか。相互理解構築のための地道なプロセスこそ、ハラスメントフリーへ向かう王道です。

(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2020.07)

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