アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第6回 復職時にはきちんと説明を

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

知っていますか これもハラスメントです

第6回 復職時にはきちんと説明を

3か月の休職を経て、2週間前に復職を果たしたばかりの笹岡圭子さん(仮名)は、産業医に「仕事をさせてもらえないし、まるで邪魔者扱いなんです!」と訴えた。

笹岡さんは、入社15年目にして初めて大きなプロジェクトのサブリーダーを任された。ときに休日返上で頑張り、責務を全うした彼女を待ち受けていたのは、魂の抜け落ちたような鬱々とした日々。クリニックでの診断は「うつ状態(燃え尽き症候群)」。自宅療養で回復し、職場復帰が決まってからは、「元通りバリバリ仕事ができるようになれば…」との期待と「もし、うまくいかなかったら…」との不安に、心が揺れ動くようになった。

「こんな仕事、私の仕事じゃない」と焦りに駆られるようになったのは、復職後間もなくのこと。忙しそうな同僚を手伝おうとしたら、上司から「余計なことはしなくていい」、「早く帰るように」と睨まれた。「私、もう治ったのに…」と大声で叫びたいのをこらえて自宅に戻ると、途端に立っていられないほどの疲労感に襲われて、涙が止まらなくなった。

復職後の不安を焦り

やっと念願の復職を果たした社員の多くは、「不甲斐ない自分」に不安を感じ、自分を責めて落ち込んだり、周囲の「無理解」に怒りを溜め込んだりします。さらに、「これではいけない」という焦燥感が周囲との溝を深め、「邪魔者扱いされている」といった被害者意識につながることさえあります。

職場の上司や同僚が、復職間もない社員のこうした心情に気づかず、杓子定規に対応していては、「ハラスメント?」と誤解される事態を招きかねません。

復職に際して、産業医、人事担当者、上司が社員の状態を正しく把握し、本人と十分な話し合いができているかどうかで、復職の成否が分かれます。何よりも肝要なのは、社員自身が「今の自分の心身の状態」を理解し、職場での現状について納得できていることです。

決してその人の能力を否定しているのではなく、持てる力を息長く発揮してもらうために現在の配慮(勤務軽減など)が必要であるということを、周りは根気強く伝えましょう。相手を肯定する姿勢を忘れず話に耳を傾ければ、ハラスメントが芽吹く隙はないのですから。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2009年6月号に掲載されたものです。

志村 翠/岡田 康子

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