アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第9回 えっ!部下からの嫌がらせ?  ~職権活用か乱用か?~

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

知っていますか これもハラスメントです

第9回 えっ!部下からの嫌がらせ?  ~職権活用か乱用か?~

「ちゃんと指示してくれないと工期に間に合わないよ!」、「無能な上司をもつと下が苦労する!」と、現場で揶揄混じりの怒声を浴びせられ、現場監督の宮下孝史さん(30代、男性)は怒りに体を硬直させた。

現場監督になって7年。持ち前の粘り強さで、数々の現場をまとめてきた実績が認められ、今回大きな現場を任された。直属の部下である年上の工事主任と、施工スケジュールについて意見が対立したのを契機に、関係がギクシャクし始めた。以来、主任は懇意の職人達と勝手に仕事を進め、「事前に相談、報告するように」と注意しても無視。職人達には「バカな宮下の言うことは聞くな」と言いふらすようになった。最近は、現場の統制が図れないどころか、誹謗・中傷にさらされ、すっかり自信喪失の状態。管理能力や責任を問われかねないので何とかしたい、と焦るものの、夜も眠れず、納期が迫る中、朝起きると頭痛と吐き気に襲われる毎日を送っている。

パワーを正しく使おう

パワーハラスメントは、職権をかさに上司から部下、先輩から後輩など、力関係で上に立つ者が下に向けて行う嫌がらせだけではありません。このケースのように、下から上へのハラスメントも含まれます。工事主任は監督より現場を熟知している、職人達との付き合いが長い、などで優位に立ち、「必要とされる情報を渡さない」、「勝手に仕事を進める」行為、さらには周囲の人間を巻き込んでの「集団のパワー」を駆使したハラスメント行為で、上司、ひいては職場を支配しようとしています。

本来あるべき指示命令系統から逸脱し、問題行動を起こす部下に対しては、上司が毅然とした態度で教育・指導することが大切です。業務遂行上必要な指示はハラスメントではなく、リーダーシップというパワーの行使です。こうしたハラスメント行為が起こりやすい土壌には、その種をまかないための教育・研修のシステムづくりも有効でしょう。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2009年9月に掲載されたものです。

カウンセラー 相賀 裕美子/監修 岡田 康子

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