ハラスメント問題第11回 どこまでが仕事?どこからがプライベート?
こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
知っていますか これもハラスメントです
第11回 どこまでが仕事?どこからがプライベート?
この春、大手運送会社の子会社に転職した牧原朋子さん(仮名・25才)は、物流営業所に配属となった。
今の職場で憂うつなのが、前の会社ではほとんどなかった‘社内行事が多い’こと。歓送迎会は所内、所外問わず多数あり、他にも研修終了後の打ち上げ、お花見や納涼会、1泊の所内旅行などが目白押し。所長からは「コミュニケーションを図る大切な場だから、全員参加!」と毎回強要される。「仕事が終わらないので、今日は欠席させて下さい」と訴えると「新人が生意気を言うな!定時に仕事が終わらないのは無能な証拠だ!」と怒鳴られる。他の所員は所長に歯向かうと評価に影響するからと、嫌々ながらも参加している。牧原さんは行事に参加しても楽しめず、仕事も滞り、プライベートな時間も削られ、ここ数ヶ月気持ちが落ち込んでいた。
ある日、仕事中に突然ろれつが回らなくなり、声が出なくなった。手の震えでパソコンも打てなくなり、受診すると自律神経失調症及び適応障害と診断された。
本当のコミュニケーションとは?
社内行事や終了後の「反省会」、「打ち上げ」などは、仕事の一環としてとらえる考え方もありますが、最近は業務外の付き合いと主張する社員も増えてきました。
歓送迎会などは、送られ、迎えられる人から感謝されることで初めて、会の目的が達成されるものでしょう。強制や義理で参加する会合がいかに無味乾燥であるか、出席者全員が感じているはずです。建前では自由参加といっても、この所長のように威圧的に無理強いすれば強制力(パワー)をもち、参加者の不評を買って、職場の士気低下を招きかねません。行事が本来の仕事の延長なのか、範囲外のレクリエーションの場なのか、管理者も社員も見極める視点が大切です。
最近は経費節減で社内行事が減少傾向にありますが、一方では希薄になった人間関係を取り戻すため、充実させたい会社もあるようです。員参加をさせればコミュニケーションが図れるものではないことを、管理者は心しておくべきです。
*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2009年11月に掲載されたものです。
カウンセラー 相賀 裕美子/監修 岡田 康子