アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第14回 忙しさから感情的になっていませんか?

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします。

事例に学ぶ 人間関係のトラブル

第14回 忙しさから感情的になっていませんか?

昨春、精密機器メーカー開発部門に就職した倉島正明さん(仮名、20代)は、異動願を出そうかと悩んでいる。きっかけは、教育担当の清水幸代さん(仮名、30代)の「この仕事、向いていないんじゃない?」の一言。社会人となって10か月余り、当初は懇切丁寧に指導してくれていた清水さんだったが、最近は清水さん自身が多忙をきわめ、ゆっくり話す時間がとれなくなっていた。倉島さんの質問にも、「いちいち聞かないで」、「自分で考えて」と即答されてしまう。1週間前、他部署へ出す企画書を倉島さんが“自分で考えて”作成して送ったところ、担当者から厳しいクレームとともに送り返されてきた。清水さんは「なぜ事前に相談しなかったの!」と激怒し、上述の一言が投げられたのだった。倉島さんは「『自分でやれ』と言ったり『相談しろ』と言ったり、いったいどっち?」と当惑しつつ、自分の業務適性について自信を失くしてしまった。

お互いに開かれた関係を築く

マンツーマンでOJT新人教育を行うシステムは、運用の仕方によっては非常に高い効果を生み出します。当初、清水さんは本来業務に追われながらも張り切って、社会人一年生の倉島さんの育成に取り組みました。しかし、素直に指示に従うものの、何かにつけて清水さんを頼る倉島さんに対し、「もう、そろそろ一人立ちして欲しい」と不満を募らせていたところへ業務の多忙が拍車をかけてしまい、つい具体的指示を欠いた感情的やり取りを引き起こしてしまったのです。その後、清水さんは同僚に相談したことをきっかけに、自分の対応のまずさに気づくことができました。一年の振り返りと併せ、今後の課題について二人で時間をかけて話し合った結果、倉島さんの異動希望は解消しました。

指導・教育する側もされる側も、役割や時間の枠に縛られて、一対一の閉塞した状況に陥りがちです。教育担当者を支援する体制・環境も同時に整え、安心して率直なフィードバックができる、開かれた関係の構築を最優先させることが大切です。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年2月号に掲載されたものです。

カウンセラー 志村 翠

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