ハラスメント問題第20回 職場の「身内」への接し方
こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします
事例に学ぶ 人間関係のトラブル
第20回 職場の「身内」への接し方
「いやぁ、助かるよ、ありがとう」。受話器に向かって柔和な口調で応対しているのは、建設会社営業課長の立川功さん(仮名、40代)だ。電話先の総務部はじめ、客先はもとより部署外での立川課長の評判は“人当たりが良く、周囲に気配りできる人”と上々だ。「とんでもない!」と課員の美濃部恭子さん(仮名、30代)は胸の内で激しく抗弁する。つい先ほども「これ、午前中にまとめといて」の鶴の一声とともに、美濃部さんの机の上に分厚い資料を置いて行ったばかり。課内での立川課長の評価は、“ジコチューで、キレたら手がつけられない人”と、外部でのそれとはまるで正反対だ。ある日、いつものように立川課長が課員を集め「数字を上げられないヤツは覚悟しとけよ!」と弁慶の長刀を振っているところへたまたま出くわした同期入社の人事部矢部道夫さん(仮名、40代)。「どうなってんだ?」と驚き、立川さんを食事に誘い出して話を聞いた。
内弁慶になっていませんか?
コミュニケーションのとり方と相手との関係性との間には密接なつながりがあります。“内弁慶の外猫”という諺が示すように、親しさ(心理的距離感の近さ)が増すにつれ、相手への気遣いや緊張感が減り、本音が表に出てきてしまうことはよくあることです。たとえば家族など身内に対し、「当たり前」、「言わなくても伝わる」との理由で、「ありがとう」という感謝の言葉を省略することはめずらしくないでしょう。職場組織においても、「身内」に当たる部署内の人間と部署外の人間とを区別し、必要以上に「身内」に厳しく接する人がいます。「きちんと指導しなくては」との責任感から発する態度・言動とも考えられますが、実は「身内」への甘えが根底に潜んでいます。立川さんも矢部さんに対し、「つい、『部下には何を言っても大丈夫』と思ってしまう」と内心を吐露しています。身近に接する人たちをまず大切にする、すなわち、適度な緊張感を保つことを忘れてはなりません。
*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年8月号に掲載されたものです。
カウンセラー 志村 翠