ハラスメント問題第22回 入社半年目の意見~寛容さを持って
こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします
事例に学ぶ 人間関係のトラブル
第22回 入社半年目の意見~寛容さを持って
外資系医療機器メーカー営業部チームリーダーの加瀬信二さん(仮名、30代)は、安斎孝子さん(仮名、20代)に、今度の会議で業務改善について提案するよう指示した。安斎さんは、米国留学で培った語学力を買われて半年前に入社し、積極性や行動力において安斎さんは新人たちの中で頭一つ抜きん出る存在。会議当日、安斎さんのプレゼンテーションを聞き、加瀬さんは驚いてしまった。安斎さんのプレゼンテーションは“ルーチン業務の無駄”について細かくリストアップし、具体的改善策を提示したものだったが、先輩社員たちへの個人攻撃にも受けとれる内容だったからだ。会議後、加瀬さんは安斎さんを別室に呼び、「立場をわきまえてものを言え」、「チームワークを壊すな」と苦言を交えて説教した。安斎さんは、「業務改善につながると信じ準備万端整えて会議にのぞんだのに、いったいどこが間違っているのですか?」と泣きながら抗弁した。
出る杭を打ってしまわないように
この春入社したばかりの新人社員にとって、半年が経過した10月は一つの節目です。実務を覚え職場の人間関係を構築することに無我夢中で過ぎた第一ラウンドを戦い終え、ようやく周囲を見渡す余裕が生まれて自分の立ち位置を確認し始めるこの時期には、さまざまな課題が見えてきます。安斎さんの場合、やる気が空回りして表出された途端、上司からガツンと打たれてしまいました。安斎さんの業務遂行への意欲は社会人としての大切な資質であり、組織にとって貴重な財産です。たとえ内容や表現に適切さを欠いていたとしても、問答無用で全否定し、“出る杭”を打ってしまうのはもったいないこと。組織の変化の芽を摘むことになるばかりか、能力発揮の好機を奪うことになりかねません。安斎さんはその後、加瀬さんとともに半年間を振り返り、助言をもらうことで体勢を立て直すことができました。第二ラウンドのゴングを鳴らす前に、上司や先輩はセコンドとして十分な支援を行いましょう。
*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年10月号に掲載されたものです。
カウンセラー 志村 翠