ハラスメント・インサイトカスタマーハラスメント(カスハラ)予防対策が急務です

カスタマーハラスメント(カスハラ)予防対策が急務です

『ハラスメント・インサイト』は、厚労省や人事院のハラスメントに関する委員会メンバーを歴任してきた弊社取締役・稲尾 和泉による連載です。
今日、人権やジェンダー、雇用形態、雇用環境、経営問題、心理、人間関係など様々な問題と複雑に絡み合っているハラスメント問題に関するインサイト(洞察)を読み解き、今、職場づくりで求められていることを、ハラスメント対策の切り口として示して参ります。

これまでの連載はこちらをご覧ください。

今年4月から5月にかけて、カスタマーハラスメント(カスハラ)について東京都が条例化に動いたことや、国が法制化に向けた検討を開始したということがニュースになりました。私たちは2022年から公開セミナーでカスハラを取り上げてきましたが、当時はそこまで関心が高まっていないように感じられました。理由としては、「カスハラといっても、判断基準や実態がどうなのかわからない」という声が多く様子見をするという印象でしたが、ここにきて一気に関心が高まっています。

2022年2月に厚労省から示された「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」*1には、どのような行為がカスハラに該当するかの基準が示されました。これから対策を進める手がかりとして、一読をお勧めします。また、2023年度から東京都産業労働局ではカスタマーハラスメント対策の動画*2を制作しており、私がその監修と解説をしております。

そんな中、私自身がカスハラをしてしまうかも…という事態に遭遇しました。夕飯として購入した食品に異物が混入していたのですが、それを伝えようとお店に電話すると、お店は営業時間にもかかわらず電話対応は終了しており、おまけに外はゲリラ豪雨。そこはかとない怒りと徒労感を覚えました。「このようなとき、うっかり相手を怒鳴ってしまうこともあるだろうな…」と、消費者の観点からカスハラ問題を考えるきっかけになりました。

カスタマーハラスメントは、現場の一次対応だけに任せていては予防することができません。苦情やクレームをカスタマーハラスメントに発展させないため、会社としてどのように対応するのかルール化し、迅速に問題を共有し対応するための仕組み作りや教育研修も不可欠です。また、取引先との間で起こるBtoBカスハラについても、「ビジネスだから仕方ない」「大事な取引先だから」と曖昧な対応をしていた場合、今後の法制化の動き次第では会社の責任を問われる事態に発展する可能性を秘めています。今度の動向に注目しながら、できるところから準備を進めていきましょう。

2024年8月

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