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ハラスメント対策の導入事例・実績一覧積水ハウス株式会社 様
導入事例積水ハウス株式会社 様
パワハラ(パワーハラスメント)は、誰もが当事者となり得る「身近な人権問題」です
全従業員が受講する‘ヒューマンリレーション研修’を継続的に実施
- ハラスメント
- パワハラ
- 提供サービス研修
- 規模1万人以上
法務部 ヒューマンリレーション室
室長 武田 勝 様
課長 中村 克彰 様
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【実施率はほぼ100% 現場で行うヒューマンリレーション研修】
弊社では、1980年から人事部が継続して人権研修を企画してきました。内容は、同和問題や障がい者、在日外国人の問題など、テーマは幅広く、その都度外部から講師を招いて実施してきました。当時から全従業員が受講する、というしくみで、今も変わらず続いています。そのような中で、2004年7月に大阪同企連(大阪同和・人権問題企業連絡会)で行われた岡田さんの講演を聞いて、「パワハラは当社内でも問題になりつつある」と実感したことから、すぐに西早稲田のオフィスに出向いてご講演をお願いしたのです。10月には早速岡田さんに幹部を対象にご講演いただきました。そして、 2005年にはクオレ・シー・キューブに依頼して、全国の拠点でパワハラ防止研修を行いました。
その後、社内の組織改編があり2006年10月に、法務部内にヒューマンリレーション室を創設し、人事部から当該業務を引き継ぐこととなりました。社内で同様な研修を継続して行うに当たり、各事業所のリーダーが講師となって研修できるためのテキストと、リーダーズガイドを作成することに致しました。このテキストの内容については毎年見直すため、現在に至るまで必要に応じて岡田さんにご相談しています。
ヒューマンリレーション研修は、積水ハウス本体のみならず、グループ会社も含めた全従業員の必須研修となっていて、実施率はほぼ100%です。そのためのしくみ作りとして「ヒューマンリレーション推進委員会」を組織しています。全社のヒューマンリレーション推進委員会の委員長は社長であり、全国各地にもその事業所の責任者を委員長とする推進委員会を組織して、私どもと連携を取りながら、研修を企画・実施しています。各事業所の推進委員会は年間のヒューマンリレーション研修の計画書を提出して実行します。幹部社員を推進委員に任命し、推進委員が受講する研修は年間6時間以上、全従業員は年間3時間以上の受講が義務付けられており、全員が研修受講後にレポートを提出することになっています。
【社内講師を養成、支店長が自戒をこめて研修することも・・・】
各事業所の推進委員長には営業本部長、支店長、事業部長、工場長、所長、関係会社社長などの組織の長が就任し、この人たちを社内講師として養成します。社内講師には、私たちがリーダーズガイドという講師用テキストを渡して、養成講座を開いてレクチャーします。養成講座を受講した組織の長に、自事業所の従業員に対してパワハラやセクハラ(セクシャルハラスメント)防止の研修を行ってもらうのです。実際に講師として人前で話すには、自分自身が相当しっかりと内容について理解しなければなりません。
また、講師である自分がパワハラ言動をしていてはどうにもならない、という意識も強く働きます。これが、事業所長自らが講師をする事の効果です。実際に現場の声を拾ってみると、若い社員が「支店長が自戒をこめて『今までは自分もこういった言動をしていたが、これからは気をつけよう』と研修で話しているのを聞いて、安心した。」という声もありました。パワハラ加害者になる可能性の高い階層の人に講師をしてもらうことで、職場全体にパワハラに対する抑止効果が働いています。
また、各事業所にヒューマンリレーション推進委員会を組織すると同時に、必ず「セクハラ・パワハラ相談窓口担当者」を、男女一名ずつ選任しています。この窓口担当者が予防的な観点から「今の職場にこういった言動があるんだけれども、ハラスメントかどうか確認したい」などと、ヒューマンリレーション室に相談してくることが増えています。酷いセクハラやパワハラになる前に、未然防止を心がける人材が、各組織で意識して目を光らせることで、日常的にハラスメント問題を意識する風土が、根を張りつつあります。
【一番身近な人権問題としての「パワハラ」】
パワハラという言葉ができる前は、人権問題というとテーマが大きすぎて、掴みにくい印象がありました。また、自分からは遠く離れた問題という意識がどうしても働きます。ところが、パワハラは自分がいつでも加害者や被害者になり得る身近な問題です。パワハラも重大な人権問題と定義することで、日常業務に密接に関わりのある身近な人権問題として、当事者意識を持って取り組むことができるようになりました。
また、ヒューマンリレーション研修の内容は討議形式になっていて、セクハラやパワハラの事例について、職場のみんなで話し合う良い機会になっています。研修後に提出されたレポートを読むと「こういう話題は、普段の会話ではほとんど出ないので、お互いを理解するよい機会になった。」「このような問題について、あえて時間を作ってみんなで考えることは大切だと思う。」など、好意的な意見が多く見られます。このような意見を受け止めて、今後も継続的にパワハラ、セクハラのテーマについて、職場で考える時間を設けていきたいと思っています。研修は全社員が年間3時間以上受けなければならないので、何回かに分けて研修したり、研修以外でも人権標語を考える時間を持ったりするなどして、定期的に人権問題について考える機会を複数回繰り返し設けることが重要だと思っています。
【継続させるためのPDCAサイクルをしっかりとまわすことが大切】
この全従業員向けの必須研修を実行するに当たっての最大のポイントは、研修を実施するための全社的なシステムをしっかりと作っておくことです。漫然と企画して実行するだけでは、このような研修を継続することはできません。現場の推進委員長を中心に、年間計画、実行した際の各人のレポート、そして研修実施報告書と受講者名簿をすべて提出してもらうことで、確かに実行していることを把握し、毎年見直しながら力強く進めていくことが必要です。ヒューマンリレーション室は、全体の旗振り役としてこのPDCAサイクルをしっかりと回すことを常に意識しています。実行するのはあくまで現場ですから、私たちはその内容を的確に把握するように努めなければなりません。それぞれの現場で「確かに研修をした、そしてそれがどのような効果を生んだ」ということをしっかりと掴み、またそのノウハウを社内に蓄積していくことに、大きな意味があります。
【メンタルヘルスやコンプライアンスも含め、様々なテーマを盛り込んでいきたい】
今後継続的に取り上げていく人権のテーマとしては、パワハラ、セクハラのほかにもメンタルヘルスやコンプライアンスの問題があります。メンタルヘルスは 2008年からすでに盛り込んでいますし、コンプライアンスに関しても組織改編後の2007年度から取り上げ、昨年からは労務管理の観点でも取り組み始めています。弊社の場合は、夜にお客様の自宅に伺って営業する、ということもありますので、そういった業務は業務時間が不規則になりがちです。労務管理の問題と長時間労働、そしてメンタルヘルス問題というのは、切っても切れない関係があると思っています。
また、新しいテーマを考える上で、国の施策や方針の流れにも注目しています。ワーク・ライフ・バランスや少子化問題なども、実際に弊社の現場の実態と重ね合わせると、たしかに着手しなければならない問題だと実感しています。それらが職場にさまざまな歪みを生み、結果としてセクハラやパワハラという事案を引き起こしている、とも言えます。ですから、その源流にある課題についてどのように盛り込んでいくか、これからも検討していきたいと思っています。
- 弊社 岡田康子より -
積水ハウスのご担当者の方々に接していると、暖かな気持ちになるのと同時に、とても気の引き締まる思いがいたします。それは、ご担当者の人権についての見識が深く、また人の尊厳を大切にする熱い気持ちが感じられるからだと思います。
研修で使用されているテキストも内容の濃いものになっていますが、特筆すべきことは職場で討議できるテキストになっていること。また、ハラスメントを起こさないためにはどうしたらよいか、との視点で、さまざまな角度からコミュニケーションのあり方について情報提供を行っていることです。
長年にわたって全従業員にこのような研修を実施することは、簡単なことではありません。こうした会社の姿勢が、何よりも「わが社は人を大事にします」というメッセージとして、従業員に伝わっていくのだと思います。
〔2009年現在〕