メンタルヘルス問題職場のメンタルヘルス問題とハラスメント対策(1)
こちらのアーカイブは、職場のメンタルヘルス問題、メンタルヘルスとハラスメント対策の関係性、職場のストレスとメンタルヘルスの関係などを紹介しています。職場のハラスメント防止策の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご利用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
職場のメンタルヘルス問題とハラスメント対策(1)
職場のメンタルヘルス問題がクローズアップされ、多くの企業組織で何らかの対策が必要になっています。既に産業医をはじめとする健康管理スタッフの充実や、定期健診時の問診などで、メンタル不全の未然防止に取り組まれている組織も多いでしょう。 しかし、メンタル不全を引き起こす原因の究明や予防対策となると、問題が複雑かつ多岐にわたることから、なかなか進まない現状もあるのではないでしょうか。職場のメンタルヘルスの問題を、ハラスメント問題の側面から捉えてみたいと思います。
弊社の調査によると、パワハラを中心としたハラスメントを3ヶ月以上受けた人の20%が、精神科を受診していました。「上司から毎日のように厳しく叱られ、うつ病になってしまった」、「精神的な病気で休職した後、同じ職場に復帰したら、上司から毎日のように『役立たず!』など厭味を言われ、症状が悪化してしまった」など、パワハラが原因でメンタル不全を引き起こしたり、あるいは症状が悪化したり、ということが職場のあちこちで起こっています。また、セクハラとメンタル不全も深く関係しており、「上司から執拗に肩や髪をなでられて、その感触が体に残ってしまって夜も眠れない」、「繰り返し食事に誘うメールを送られ、おまけに帰り道に待ち伏せされて、会社に行くのが怖くなってしまった」など、被害者は多大なダメージを受け、それが引き金となり休職や退職を余儀なくされる、というケースもあります。このように、職場のメンタルヘルス問題の背景にハラスメントが潜んでいることは決して珍しいことでなく、むしろ関連が深いといえます。
メンタル不全の背景にハラスメント問題が関係している場合には、原因となっているハラスメント行為をやめさせたり、当事者同士を引き離したりするなど、抜本的な対策が必要ですが、このときに「そうは言ってもあの加害者は実力者だし、これ以上こじれると問題が大きくなって大変だ」という意識で中途半端な問題解決を図ろうとすれば、事態はますます悪化してしまいます。被害を受けた人は、「加害者が自分にあんな言動さえしなければ元気に働けていたのに、自分の人生を台無しにされた」というやりきれなさや、「自分はこんなに苦しんでいるのに、加害者は何もなかったかのように、平然と仕事をしているなんて」という悔しさや怒りを抱えています。この被害者の気持ちを汲み取れなかったとき、被害者は訴訟に向かったり、ますます体調を崩したりしていくのです。この気持ちをしっかりと捉え、加害者の行為が被害者の人生を台無しにしたのだという視点から、毅然とした措置が求められます。そのためには、就業規則や行動規範で「ハラスメント行為は許さない」という企業組織の姿勢を明確に打ち出し、研修などを通じて繰り返し従業員にメッセージを送り続ける必要があります。
また、ハラスメント被害を受けてうつ病などを発症してしまった場合は、自分がどのような解決方法を望んでいるのか冷静に判断できない場合もあり、後になって『あんな対応では納得できない』と異議を申し立てられる可能性もあります。問題解決よりも、被害者の体調の回復を優先させ、ある程度体調が回復してから被害者の意思を確認しながら進めることが必要です。
いづれにしてもこのような結末は、従業員にとっても企業組織にとっても避けなければなりません。管理職対象のメンタルヘルス研修でハラスメントとの関連についても触れ、ハラスメントにならない部下指導やコミュニケーションとは、といった内容を盛り込むことも大切です。
一方、ハラスメント行為とはいえないような些細なことで「パワハラを受けたので休みたい・・・」などと訴えるケースも見られます。次回はこのようなケースについてお話します。
(株)クオレ・シー・キューブ (2009/6/26)