メンタルヘルス問題職場のメンタルヘルス問題とハラスメント対策(2)
こちらのアーカイブは、職場のメンタルヘルス問題、メンタルヘルスとハラスメント対策の関係性、職場のストレスとメンタルヘルスの関係などを紹介しています。職場のハラスメント防止策の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご利用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
職場のメンタルヘルス問題とハラスメント対策(2)
職場のメンタルヘルスの問題を、ハラスメント問題の側面から捉えてみると、前回ご紹介したような『明らかに加害行為が原因でメンタル不全を起こしている』ようなケースばかりとはいえません。最近ではハラスメントとはいえないような些細な叱責で「パワハラを受けたので休みたい・・・」などと訴えるケースが増えています。被害者側の精神的な弱さや、ストレス耐性のなさが原因となっている場合には、どのように対応すればよいのでしょうか。
『最近の若者は・・・』と嘆く大人は古代ローマ時代からいたそうですが、若年層のストレス耐性について、若年層の視点から捉えてみると少し考え方も変わってきます。例えば、いまや万人が手にする携帯電話は、20年前には持って歩くのが恥ずかしいほどの大きさで、多くは固定電話を使っていました。その時代では、友人と電話で話すためには友人宅の固定電話にかける以外に方法はなく、子供心に「頑固者のお父さんが出たらどういって取り次いでもらおうか?」などと思案したものです。実はこれもコミュニケーションの大切な訓練になっていました。『相手の状況を想像しながら、自分の対応を変える』という大事な社会訓練の場だったともいえます。
しかし、1990年代の中ごろには小型の携帯電話が登場し、固定電話を使わなくても、いつでも直接気の合う友達と連絡を取り合える時代になりました。そしてまもなくメールの時代へと変化していきます。『相手の状況などおかまいなしに、いつでも気兼ねなく連絡できる』のは大変便利な反面、相手を思いやって自分の行動を変えるような体験そのものを奪い去った、ともいえるのです。子供のころに叱られた体験がないから打たれ弱いんだ、というのはよく言われることですが、それ以前にそもそも『気の合う仲間以外の人とコミュニケーションしたことがない』世代が、新社会人となっているのです。今の若年層はKY(空気を読むこと)をもっとも気にかけている、とよく言われますが、それは生身の人間とのコミュニケーション体験が乏しいがゆえに、過度に周囲の視線を気にしてしまい、想像しては疲れきっている状況そのものです。携帯電話の普及を象徴としたこのような社会体験の乏しさを、若者だけのせいにしても問題は解決しないでしょう。
今の時代の管理職や社内相談窓口の担当者は、このことを念頭に置いた対応が求められています。社会体験の乏しさは、そのまま「上司の機嫌を損ねたら、自分の人生は終わってしまう」という恐怖心や、「自分の考えを受け入れないなんて、上司が悪いに決まっている」という自己中心的な心理状態を生み出しかねません。彼らの話に辛抱強く耳を傾けながら、彼らの成功体験を手助けしていかなければ、些細なことでつまずいて自信を失った彼らはメンタル不全を引き起こし、あっという間に退職してしまうでしょう。
具体的には、社会人としての心得やマナーの教育から、『報告・連絡・相談はこまめに行う』など組織内で仕事をする際のルールについて、当たり前のことを一つ一つ確認していくことです。遅刻を繰り返す部下に、なぜそれが何故許されない行為なのか、「そんなこと言わなきゃわからないの?」と言うのではなく、しっかりと伝える必要があるのです。何故なら「遅刻すると上司からの評価が落ちるからまずい」、「遅刻なんて誰もがする可能性があるのに、何で自分だけこんなに叱られなくちゃならないのか」、など、表面的にしか捉えていない人が少なからず存在するからです。皆さんはなんと説明するでしょうか?
バブル時代から現在まで、私たちを取り巻く職場環境は激変しています。私たちの過去の体験を部下の育成にそのまま生かすことは、もはやできないといっても過言ではありません。若年層だけでなく、管理者層もこの環境変化の中で対応の変化を常に迫られています。彼らは悪気があって問題行動を繰り返しているのではなく、純粋に『わからない、知らない、体験したことがない』だけかもしれません。手取り足取りのように感じても、一つ一つ丁寧な対応が求められます。
こうなると、管理者層のプレッシャーはますます強くなっていきます。業績アップとともに部下指導も手取り足取りとは・・・という管理職層のため息が聞こえてきそうです。次回は管理職自身のメンタルヘルスについてお話します。
(株)クオレ・シー・キューブ (2009/7/24)