アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第12回(最終回) 業務の引き継ぎがきっかけで・・・

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

知っていますか これもハラスメントです

第12回(最終回) 業務の引き継ぎがきっかけで・・・

医療機器メーカーで営業事務を担当している平田純子さん(仮名・33歳)は、先月着任したAさん(50代男性)に顧客リスト作成業務を引き継ぐよう、上司から言われた。

Aさんは「スゴ腕」と評判のベテラン営業マン。人当たりは良いが、なぜか平田さんには最初から威圧的な態度をとるため、顔色をうかがいながら接していた。

ある日、Aさんの客先でトラブルがあり、平田さんの連絡ミスだと一方的に責められた。以来、Aさんに「お前は信用ならん!」と無視されるようになった。思いきって「侮辱的な言動はパワハラです」と言ったところ、「ばかやろう!パワハラってのは上司が部下にするもんだ。俺はお前の上司じゃない!」と怒鳴られ、平田さんは屈辱と情けなさで、うつ状態になってしまった。職場で唯一の女性先輩に相談すると「気遣いの足りないあなたにも、問題あるんじゃない?」と言われた。「気遣いは、し過ぎるほどしているのに…」と平田さんは仕事も手につかず、うつ状態が悪化し、ついには休職に至った。

担当者に仕事を任せるということは?

業務の引き継ぎは職場における大切な仕事の一つですが、一般的に、「教える」側の「教えられる」側への優位性から、パワハラになりやすい状況をはらんでいます。

本件では、「教える」、「教えられる」の立場が、年齢・経験と逆転したことでAさんのプライドが傷つき、平田さんへハラスメントの矛先が向かったものと思われます。平田さんは勇気を奮って「パワハラです」と伝えていますが、これがさらに火に油を注ぐ結果となりました。

先輩女性の言葉にも二次的な被害を受け、結果としてうつ症状が悪化し、業務が滞ったことは、組織としても大きなダメージとなりました。平田さんが早い段階で上司に「仕事を進める上でのやりづらさ」を相談し、上司も周囲も2人の関係性に気づいて対処できていれば、ここまでの被害は避けられたでしょう。

担当者に任せるということと、放置することは決してイコールではないのです。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2009年12月号に掲載されたものです。

カウンセラー 相賀 裕美子/監修 岡田 康子

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