ハラスメント問題第17回 立場の逆転現象が起きたら?
こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)
中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします
事例に学ぶ 人間関係のトラブル
第17回 立場の逆転現象が起きたら?
「そんな弱腰じゃ、下は動けませんよ!」金融営業チーム浜中順二さん(仮名、30代)の鋭い突っ込みにおそれをなし、密かに舌打ちする新任リーダーの田上和夫さん(仮名、40代)。販促会議でのいつもの光景だが、他のメンバーも浜中さんの勢いに押されてか、田上さんを見る目は冷ややかだ。行動派の浜中さんに対し、田上さんは石橋を叩く慎重派。会議の場が弁の立つ浜中さんの独壇場となり、やり込められる田上さんだが、メールでも「○○の件、進捗状況はどうですか?」、「△△の企画について早く指示を下さい」と矢継ぎ早に質問が飛んでくる。「どっちがリーダーなんだ!?」、「周りはどう思っているだろう?」と情けなさと腹立たしさでやりきれない思いが募る。田上さんは睡眠が浅くなり、ぼーっとすることが増え、一方、浜中さんの舌鋒はますます鋭さを増してきた。
個人を生かすリーダーシップとは
組織の中で各メンバーの持てる力を引き出し、チーム全体を采配することは容易なことではありません。一昔前のような“年功序列”、“長幼の序”が尊ばれる企業文化が後退し、実力・成果主義が前面に押し出されて以来、個人をバックグラウンドも含めた全体で評価するより、業績や数字など目に見える結果で判断することが多くなりました。本ケースでは、積極性や行動力において浜中さんが勝り、また、そのことを本人も周囲も認めているからこそ、田上さんとの間で立場の逆転現象が起きています。田上さんは自信を喪失し、浜中さんは欲求不満を募らせることで、チームの求心力が削がれ、作業効率も低下します。悶々としていた田上さんは部長からの次の一言で救われました。「浜中君に能力発揮の機会を与えれば、君が楽できるよ」。
初めから優劣を競い合うのではなく、リーダーが陣頭に立って各自の守備範囲や役割・目標設定を明確化し、全員で共有化することで一人一人のモチベーションが向上します。組織活性化の第一歩は、“いかに個人を生かすか”にかかっているのです。
*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年5月に掲載されたものです。
カウンセラー 志村 翠