アーカイブハラスメント問題

ハラスメント問題第21回 「冷房が寒い」と言い出せなくて

こちらのアーカイブは、職場のハラスメントに関する解説を事例などを交えて記載しています。パワハラ・セクハラ防止研修の教材や職場におけるハラスメント防止の啓発ツールとして、出典を明記の上、ご活用ください。
(出典記載例:株式会社クオレ・シー・キューブホームページ)

中央労働災害防止協会発行の 【安全衛生のひろば】に掲載された記事をお届けします

事例に学ぶ 人間関係のトラブル

第21回 「冷房が寒い」と言い出せなくて

「聞いてもらって少しスッキリしたわ」。保険会社で営業事務を担当している沖山美知子さん(仮名、20代)はほっとした笑顔を浮かべた。「どうして周りの人たちに言わないの?」と一向にスッキリしないのは、話を聞かされた大学時代の親友、平田啓子さんだ。沖山さんの“聞いて欲しかった話”とは、職場の自席がエアコンの風に直撃される位置にあり、寒くて業務に集中できないということ。省エネ対策で設定温度を平年より高めにセットしているため、他の社員たちは外から戻ると口々に「暑い、暑い!」と流れる汗を拭いている。「なんだか言い出しにくい」のだ。沖山さんは職場で最年少、かつただ一人の女性社員なのだ。周りから見えないよう、こそこそ靴下を履いたり、膝掛けをかけたり工夫しているが、「どうして私だけ我慢しなきゃいけないの?」と、最近はイライラするようになってきた。「もし、これで体を壊したら“労災”よね?」と、お茶をすする沖山さんの口からは、平田さんが思いもよらない発言まで飛び出した。

「問題解決」の主体は自分自身

問題が生じた際、自分の状況や気持ち、考えを周囲の人たちに説明し、理解が得られるよう努めることは、社会生活を送る上で必要不可欠です。しかし、伝え方(表現のしかた)によって人間関係が大きく左右されるため、「言っても分ってもらえない」、「職場で居辛くなると困る」などさまざまな悪い結果を予測し、躊躇して胸の奥深くしまいこむことがあります。これでは望ましい変化は見込めません。働きやすい職場環境作りは、組織全体のためであると同時に、個々の従業員のためであり、一人一人が責任を負っています。本ケースの沖山さんのように、辛い状況を放置することを選び、その結果、「どうして私ばかりが…」と被害者意識を募らせていくことはもっとも避けたい結末です。“問題解決”の主体は自分自身であることを自覚し、責務を全うするために自分はどうすべきか考え、行動する勇気を出しましょう。

*当原稿は、中央労働災害防止協会発行【安全衛生のひろば】2011年9月に掲載されたものです。

カウンセラー 志村 翠

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