ハラスメント・インサイト「配属ガチャ」にどう向き合うか

「配属ガチャ」にどう向き合うか

『ハラスメント・インサイト』は、厚労省や人事院のハラスメントに関する委員会メンバーを歴任してきた弊社取締役・稲尾 和泉による連載です。
今日、人権やジェンダー、雇用形態、雇用環境、経営問題、心理、人間関係など様々な問題と複雑に絡み合っているハラスメント問題に関するインサイト(洞察)を読み解き、今、職場づくりで求められていることを、ハラスメント対策の切り口として示して参ります。

これまでの連載はこちらをご覧ください。

新入社員を迎える4月になり、職場でも新たな人材を受け入れる準備に忙しいことでしょう。そんな中、「配属ガチャ」というキーワードが話題になっています。株式会社インタツアーが2024年1月に今春卒業予定の大学生を対象に行ったWEB調査「配属ガチャについての意識調査」によると、配属先で重視するポイントは「勤務地」が6割以上。次に職種・部署が2割。希望する勤務地は東京都が5割以上で、希望の職種は営業職がトップとなっています。

一方、希望した職種と実際の配属については、最大で22%のギャップが生じています。また、配属の告知について、内定式後から入社式のタイミングで告知された人の7割以上が「告知時期が遅かった」と回答しています。そして、配属先が選べないことでエントリーを見送ったかどうかについては、半数近くの48.7%が「はい」と答えています。勤務地や職種を選べないことが学生のエントリーに影響を与えているという現状には、会社がそこまで採用時に配慮しなければならないのか?と驚きを隠せません。

近年「希望の仕事ができないので会社を辞めます」と、入社早々退職してしまう新入社員が増えていますが、その背景に「配属ガチャ」「上司ガチャ」というキーワードの広がりが影響しています。1コインで楽しめるガチャガチャと、人生の岐路となる就職に関するガチャガチャでは、その重みも全く異なります。それでも簡単に「自分の希望ではないから」という理由で退職や転職をしてしまう感覚は、およそ理解できない人も多いのではないでしょうか。

「タイパ」という言葉に象徴されるように、ムダな時間を省いてすぐに答えが出ることに最大の価値を置くようになった現代社会では、以前のように「会社の配属辞令に従うのは当然だろ!」などと部下の話を全く聞かないマネジメントはパワハラという訴えにつながってしまうのでしょう。

自分の常識と新入社員の常識が異なることを前提に、会社や上司の期待を丁寧に伝えフォローすることが、この先の管理職にとってますます大切な役割となっていきます。そんな管理職をサポートする体制づくりも、同時に進めたいものです。

2024年4月

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