- Home
- ハラスメント情報館
- ハラスメント対策最前線
- 職場のメンタルヘルス問題に関する動向、最近の事例と企業組織の対応や留意点について
ハラスメント対策最前線職場のメンタルヘルス問題に関する動向、最近の事例と企業組織の対応や留意点について(3)
「心の病」の労災件数 過去最多
平成25年6月21日、厚生労働省は、『平成24年度「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」まとめ』を発表しました。その中で注目すべきは、精神障害の労災認定件数が475件で、前年度比150件増、過去最多ということです。年間の自殺者は、ようやく減少しはじめたものの、労災と認定された自殺者(未遂を含む)は、93人と増加。
過重労働、対人関係の問題などとの関連が強いようです。セクシャルハラスメントによるものも、45件が認定決定しています。
新聞報道によると、「過労死・過労自殺」を減らすために、国会議員たちが、『過労死防止基本法』制定を目指す超党派議員連盟の発足を決定したとのことです。
ともかく、会社側も、「心の病」の労災をなくすべく、さらなる努力が必要でしょう。
うつ病学会におけるメンタルヘルス関連講演をきいて
「うつ病患者の会社復帰」に関して講演内容をまとめます。
今回の会長である産業医科大学の中村教授の講演の中で、大学病院の外来診療の結果では、うつ病のために休職した人が回復して6か月間復職継続できた人は4割ということでした。つまり、復職をした人の6割は、復帰半年以内に、再休職か退職したということになります。
これは、復職決定がいかに難しいかということです。
そこで、円滑に復職するためのポイントとして、
① 診療上、いかに回復しているか?
仕事をきちんとこなせる状態までに改善しているか?
② 本人の意思、モチベーションの確認
③ 本人も会社も十分な準備ができているか?
が、挙げられます。
休職者本人に求められることは、まずは、主治医の指示に従い、療養に専念することです。病状が改善してきたら、生活リズムを規則正しく過ごしながら、体力向上を図ります。場合によっては、リワークプログラムに参加し、より職場環境に近い状況で慣らしていくことをすすめます。
一方、会社側には、適切な対策・対応が求められますが、メンタルヘルス対策を講じてないところも少なくありません。この労災認定の増加の報告からも、問題が起きる前に、早急な対策をとるべきでしょう。
「心の病」による休職者が復帰する際、的確な復職判定には、主治医と会社側の連携が必要です。「復職可」の診断書が提出されただけで、会社側の適切な準備もなく、復職させてしまうと就労継続が早急に難しくなる事態が推測されます。また、「正式復職可」の診断書が出されていながら、漫然と2,3か月待機させられると、休職者のモチベーションが低下してしまうかもしれません。
会社側は、会社独自の復職基準、復職支援制度を構築するべきです。それらを、休職者に知らせておくだけでなく、復職判断を主治医に求める前に、主治医にも提示しておくと、相互理解がすすみ、連携がとれ、円滑に復職がなされるのではないでしょうか?
以上、有益だった講演内容に、私見を含めて、まとめてみました。
(2013年8月)
苅部 千恵(かりべ ちえ)
所属 (かりべクリニック院長)
1980年 横浜市立大学医学部卒業
1980年 九州大学医学部心療内科勤務(九州大学医学部)
第一内科、第三内科、心療内科にて研修及び研究
1987年 東京大学医学部心療内科勤務
1994年 昭和大学医学部附属藤が丘病院勤務(兼任講師)
1995年 医療法人財団健生会勤務(理事)
1998年 かりべクリニック開業
【所属学会】 日本心身医学会 日本産業衛生学会 日本産業ストレス学会 日本心療内科学会 日本東洋医学学会 日本うつ病学会 |
【資格】 医学博士 労働衛生コンサルタント 日本医師会認定産業医 心身医療「内科」専門医 |
その他の記事
-
原 昌登
成蹊大学 法学部 教授 -
津野 香奈美
神奈川県立保健福祉大学大学院
ヘルスイノベーション研究科 教授 -
水谷 英夫
弁護士 -
中島 潤
認定特定非営利活動法人ReBit(リビット)所属 -
ハラスメント・インサイトnew稲尾 和泉
クオレ・シー・キューブ
取締役 -
村松 邦子
経営倫理士 -
苅部 千恵
医師