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ハラスメント対策最前線職場のメンタルヘルス問題に関する動向、最近の事例と企業組織の対応や留意点について(10)
ストレスチェック制度の問題点と課題
ストレスチェック制度
ストレスチェック義務化法案(通称)が施行されて、2か月近く経ちました。進捗状況はいかがでしょうか?
とりあえず、本年11月30日までにストレスチェックを実施さえしていれば、面接指導などは12月以降でも法的には問題ありません。それまで、安全衛生委員会や関係部署で十分に議論、検討されて詳細を決定するとよいと思います。12月以降でも大丈夫と述べましたが、「労働者は結果の通知を受けた後、遅滞なく面接の申し出を行うこと、事業者は、申し出があったときは、遅滞なく面接指導を実施しなければならない」となっています。「遅滞なく」をおおむね1か月以内と捉えると、翌年2月頃までには面接指導を実施しなければならないでしょう。
問題点1)ストレスチェックの実施方法
実施方法として以下の方法が考えられます。
- ① 企業内で産業医などが実施者となり、質問票(厚労省が推奨しているのは、職業性ストレス簡易調査票 57項目)を用いて、配布、記入、回収、結果集計をする
- ② 企業内でICTを活用。厚労省がプログラムを無料公開しているが、企業が独自で開発実施しているところもある。
- ③ 外部機関に委託する。
これらの方法の問題点として、①では、いつどこで実施するか、結果集計は誰が責任もって行い、管理するのか。②では、社内でのオンラインシステムが構築されていない場合は新たに構築しなければならず、情報管理、結果の保存管理を徹底しなければならない。③の方法を選択予定だが、外部機関の選定に難渋している企業が多いと思われます。企業の担当者には外部委託機関から「ストレスチェックの実施から、結果報告、集計、医師による面接指導まですべてを引き受ける」というような勧誘案内が頻繁にあると聞きました。しかも料金設定には、かなりの開きがあるようです。外部委託機関の選定に当たっては、企業内の産業医と密接な連携がとれるのか、個人情報の管理体制、妥当な料金設定なのかなどをよく検討、吟味する必要があると思います。
問題点2)産業医の役割
このストレスチェック制度においては、産業医の役割がますます重要になります。日頃から企業の状況を把握している産業医がストレスチェックを実施し、高ストレス者との面接指導も直接関わっていくことが求められています。しかしながら、産業医の中には「メンタルヘルス相談」や「高ストレス者への面接指導」は少々不得手という方がおられるのは事実です。また、これまでの産業医業務に加え、高ストレス者への面接指導が加わることで、負担増となり、契約時間内に仕事がこなせなくなるのではという懸念の声が上がっています。日本医師会や学会などでは、産業医を対象に積極的に研修会や勉強会を開催していくようですから、産業医自身が自己研鑽するとともに精神科医や心療内科医などと連携できる体制作りも必要となってくるでしょう。企業側も産業医との契約内容を見直し、産業医が活動しやすい環境を整えることが重要です。
このほかにも、具体的な疑問に対しては、厚労省のHPの「ストレスチェック制度関係 Q&A」 が参考になるので参照してください。
(2016年1月)

苅部 千恵(かりべ ちえ)
所属 (かりべクリニック院長)
1980年 横浜市立大学医学部卒業
1980年 九州大学医学部心療内科勤務(九州大学医学部)
第一内科、第三内科、心療内科にて研修及び研究
1987年 東京大学医学部心療内科勤務
1994年 昭和大学医学部附属藤が丘病院勤務(兼任講師)
1995年 医療法人財団健生会勤務(理事)
1998年 かりべクリニック開業
【所属学会】 日本心身医学会 日本産業衛生学会 日本産業ストレス学会 日本心療内科学会 日本東洋医学学会 日本うつ病学会 |
【資格】 医学博士 労働衛生コンサルタント 日本医師会認定産業医 心身医療「内科」専門医 |
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