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ハラスメント対策最前線コロナパンデミック・DX時代の雇用と法律問題(9)
カスタマーハラスメント対策に広がるAIの活用
- QAIはどの様に用いたら、カスタマー・ハラスメント対策になりますか?
- A企業のコールセンターや電話受付、病院の看護師などが日々顧客からの暴言や理不尽な要求に悩まされ、その結果としての離職が後を絶ちません。これに対して近年AIの活用により、従業員の負担を減らす(あわせて離職を防ぐ)動きが広がっています。
1.チャットGPT
「Q カスハラの定義とその対策は?
A カスハラの対策には、企業が判断基準を明確にし、対応方針を統一して現場と共有することが重要です。
カスハラは、顧客による過度な要求や不当な言いがかり、暴力的で侮辱的な言動などの迷惑行為を指し、労働環境の健全性を脅かす深刻な問題です。従業員に不安やストレスを与え、職場の環境や業務効率に悪影響を及ぼす可能性があります。カスハラ対策として、企業が取るべきことは次の通りです。判断基準を明確にする、対応方針を統一する、現場と共有する。
厚生労働省は、民間企業でのカスハラ対策の一環として「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を作成しています。このマニュアルでは、妥当性が欠けている要求や、社会通念上不相当な言動について、労働者の就業環境が害されるクレームとしてカスハラと定義しています。
また、東京都は、2024年10月に「東京都カスタマーハラスメント防止条例」を制定し、2025年に施行します。この条例では、あらゆる場において、カスタマー・ハラスメントを行ってはならないと規定しています。」
皆さん、これは全てチャットGPTによる文章です。すごい文章力ですね。
2.生成AIによるカスハラ対策
そもそもカスハラという概念が広く知られる以前から、顧客からの悪質なクレームは大きな問題となっていました。何故なら特に電話の場合、相手の顔が見えないことから、顧客は様々な暴言を発しやすく、それだけ従業員の心理的ダメージは大きくなるからです。これに対しては従来から「下品な発言や暴言があった場合、即座に電話を切る」、「電話が一定時間を超えた場合、上司に報告する」等の対策が講じられていましたが、このような対処療法のみではカスハラを封じることができず、かえって暴言等が拡大する可能性もあり、何よりもダメージを受ける従業員の保護に不十分と言えます。
また特に金融等のお金を管理する部門では、特殊詐欺などの新たな犯罪の広がりを受け、手続が厳格化されており、口座開設やクレジットの申込時の本人確認の際、健康保険証などの顔写真のない公的書類だけでは認められず、他の書類提示が求められるようになり、特に高齢者を中心に「昔はこんなに面倒ではなかった」と苛立ちを募らせる顧客が増加しています。
このような顧客に対する新たなツールとして、AIの活用が広がっているのです。具体的には、特に電話を中心とした悪質クレームに対しては、リアルタイムでハラスメント行為を検知し、顧客の威圧的な音声をAIが穏やかなトーンに変換して、従業員のショックを和らげたり、ハラスメントで傷ついた従業員を上司が励ます際に、文言を生成AIがあらかじめ場合に応じて作成させる等の動きが広がっています。今や将棋の世界ではAIを用いて対策を練るのは当たり前になっており、カスハラ対策もAIを用いる時代に入ってきたと言えるのではないでしょうか。
(2024年11月)
水谷 英夫(みずたに ひでお)
弁護士 (仙台弁護士会所属)
1973年 東北大学法学部卒業
「コロナ危機でみえた 雇用の法律問題Q&A」(日本加除出版、2021年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策(第5版)」(民事法研究会、2020年)
「第4版 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス パワハラ防止法とハラスメント防止義務/事業主における措置・対処法と職場復帰まで」(日本加除出版、2020年)
「第3版 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス マタハラ・SOGIハラ・LGBT/雇用上の責任と防止措置義務・被害対応と対処法」(日本加除出版、2018年)
「AI時代の雇用・労働と法律実務Q&A」(日本加除出版、2018年)
「改訂 予防・解決 職場のパワハラ セクハラ メンタルヘルス」(日本加除出版、2016年)
「QA 労働・家族・ケアと法-真のWLBの実現のために-」(信山社、2016年)
「職場のいじめ・パワハラと法対策」(第4版)(民事法研究会、2014年)
「感情労働とは何か」(信山社、2013年)
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