Q.ハラスメント対策に関心を持ったきっかけは?
稲尾 クオレ・シー・キューブ(以下、稲尾):
津野さんがハラスメント対策に関心を持ったきっかけをお聞かせください。
津野氏:
ハラスメント対策に関心を持ったのは、さかのぼると20年くらい前のことです。学生の時に、色々な職場で仕事をしてみたいというモチベーションがあり、アルバイトとして様々な職種を試しました。その中でも営業の仕事がしたくて、教材販売の仕事をしていたのですが、非常にノルマが厳しい会社でした。一件成約すると名前の横に花をつけるような、典型的な成績至上主義の会社だったんです。中でも女性の部長の方がものすごく仕事が出来る方で、その人が営業すれば必ず契約が取れるという状態でした。とても尊敬していたんですけれども、ほかの人には非常に厳しかったのです。私は幸い成績がよかったので褒められたのですが、社員さんには契約が取れないと叱咤激励していて、それがどんどんエスカレートしていき、ほかの部屋で怒られているのが洩れ聞こえてくるようになりました。社員さんたちはみるみる顔色が悪くなって。私がそこで働いていたのは半年ぐらいだけだったのに、そもそも10人ぐらいしかいない会社だったにもかかわらず、3人、4人と、社員さんはほぼ全員かというぐらい辞めてしまって、皆さん会社に来られなくなってしまったんです。
その部長は、今でいうパワハラをやっていたわけですけれども、まったく意に介することなく、私のことを「素晴らしい」と褒めたりとか、二面性を見たんですね。そのように成績がいい人を褒めるのは間違っていないけれども、一方で成績が悪ければ何をしても良いってわけじゃないと、強烈な違和感を覚えたんです。これは何とかしなきゃいけないと思う一方、私は当時二十歳そこそこの大学生でしたので、なかなかこうしたらいいなどとは言えなかったんですね。それがすごく悔しくて。自分が改善できなかった、それを止めることができなかった。何とかして、健全な方法で売り上げを上げたり、人のモチベーションあげたり、そういう方法を勉強できないかと思ったのが、最初のきっかけです。
パワハラはなぜ起こるのかをエビデンスで証明することで対策を促したい
稲尾:
自らの体験から・・・
津野氏:
そうなんです。やっぱりそこがずっと根底にありまして。職場のメンタルヘルスに関心をもったのはそれがきっかけですし、もしかするとこの会社だけじゃなくて、こういったパワハラ行為が他の会社でも起きているんじゃないかと、危機感を覚えたんです。それで、どうにかなくしたいと思いました。パワハラがどういう職場で起きやすいのか、どういう上司がしやすいのか、またパワハラ受けるとどういう健康影響が出るのか、それらをエビデンスで証明することで、対策をどんどん促したい。エビデンスを提供する側に回りたいと思って、研究の道に進みました。
稲尾:
ちょうどパワハラという言葉ができた当時のお話です。その時の自らの体験と周りの人の様子、強烈だったんですね。
津野氏:
強烈でしたね。今でもたまにその光景が思い浮かびます。あの人たちは今、ちゃんと仕事できているかな、と思ってしまうのです。罪滅ぼし的な考えもあって、あのような被害者を少しでも減らしたいなという思いと、もう一つ、そういったパワハラをせざるを得ない、それしか術を知らない上司の人たちが、そうでない方法を学ぶことで、本人も苦しくないようにしたいと思っています。
稲尾:
そうですよね。被害を受けて傷つくのももちろんですけど、している側の心境とか、その先の、指導の仕方だったり、キャリアについても、どちらも改善しないとという思いがありますよね。
津野氏:
やっぱりつらいと思うんです。そのパワハラをしている上司も、気持ちよくはないと思うんですよね。本人なりに苦しんでいて、他の方法が分からないのかなと感じています。パワハラをしないほうが得だし、自分自身の気分が楽だし、そのほうがよっぽど楽しいということが、もっと知られるといいのかな、と思います。
稲尾:
私たちも、パワハラ上司の人の話を聴いていても、パワハラをしているつもりはないし、皆さん熱心で、より良くしたい、成長させたいと。成長させたい、良くしたいと思っているんだけれども、パワハラになってしまうという苦しみがありそうですよね。
津野氏:
本当に方法を間違っているだけで、その熱意は決して間違っていないので、上司の方も傷つけずに、良い方向に、健全な方向に示すことができたらいいかなと思います。
20年研究を重ねてきたが、中小企業でのパワハラに関してはまだメスが入っていない、知られていない
稲尾:
その両方が必要だということですね。20年前のきっかけで研究の道に入って、そこから論文もたくさん書かれていますが、20年間で変わってきた感じはありますか?
津野氏:
そうですね、もちろんパワハラの知名度は抜群に上がったと思いますし、こうやって法律が変わってパワハラ対策をまずは大企業が取り組むようになって、対策として進んでいることは間違いないと思います。
ただ、私が見てきたような、中小企業で上の職位の人がとても成績が良くて、その人の言うことを誰も否定できないという状態でパワハラが起きている、その辺に関してはまだあまりメスがはいっていないのかなと思っています。特に、私自身がエビデンスとして提供したいのがどうしたら防止できるかということですが、そこに関してはほとんど知られていないと思います。どういった環境でパワハラが起きやすいのか、あるいはどういった上司のもとだとパワハラが起きやすいのかとか、上司への教育で、どういうところに気をつけたらいいのかとか、その辺がまだエビデンスをもとに対策が行われていないので、効率的ではないなと感じています。闇雲に「とりあえず研修しましょう」と言っていても、それが本当にパワハラ防止に役立つのかというのは、ほとんど検証されていません。すでに「こういったことがあるとパワハラ予防効果になる」ということがわかっているので、エビデンスを用いることによって、より短期間に、少しでも近道で進めることができるのではないかと思います。
稲尾:
大企業と中小企業の違いは何かありますか?
津野氏:
あげるとしたら、やはり監視の目ではないでしょうか。大企業は従業員の人数が多いので、上司の人数も多く、お互いに注意しあうことも可能だと思います。一方、中小企業は上司層が圧倒的に少なく数人だけだったりします。それ以外の人が上司層を注意するかというと、それは極めて難しいため、なかなか改善がされにくいと感じます。ただ、どんな上司であるとパワハラをしやすいかという部分に関しては、普遍的なものなので、それは中小企業であっても、大企業であっても変わらないと考えています。あくまでも、抑止力となる第三者の目ですね。その辺に関して圧倒的な違いがあると思っています。
稲尾:
それが原因なんだとするならば、大企業と中小企業で、どうにもならない部分でもありますよね。だとすると、中小企業でうまくいくようになったら、それはそのまま大企業にも当然活かすこともできるということもあるのではないでしょうか。
津野氏:
中小企業の一般職の方、上司層じゃない人たちが、パワハラはこういうもので、企業に(※中小企業は2022年4月から)防止義務が義務付けられるのだということを、きちんと知るということが大事だと思います。おそらくほとんどの大企業では既に対策を実施しているので、社員の方はパワハラがどんなもので、法律で禁止されているということも知っている方が多いと思います。だからこそ、抑止力が効いたり、「これはおかしい」と声を上げやすいと思いますが、中小企業は社員がそれ自体を知らない可能性があります。そうなると、諦めてしまったり、アクションしなかったりすることに結びついてしまうのではないかと。その辺の教育っていうの、は1つ可能性としてはあると思います。
まだまだ知られていない「パワハラ対策義務」
稲尾:
まだまだ行き届いてない部分があるのですね。
津野氏:
そうですね。余談ですが、2020年度に厚労省の委託事業でハラスメント外部相談窓口の有効性を検証する事業があり、私も委員として入っていました。その調査で分かったことなのですが、建設業の担当者の方に「中小企業にも2022年4月から、パワハラ対策が義務付けられることをご存知ですか?」と聞いたら、なんと7割が「知らない」と回答していました。もちろん相談窓口についても設置義務があるなんて知らない人がほとんどです。回答した人はおそらく人事・総務の担当者ではないかと思いますが、その状態だとおそらく上司層もトップも知らない可能性が高いと考えられます。当然、一般社員の方はそれ以上に知らないでしょう。それを教育で、どのくらい改善できるかわからないですけれども、まず着手すべき部分かと思います。
稲尾:
ちゃんと知らないとアクションを起こしようがないということですよね。
パワハラとはこういうもので、ダメなんだよっていうことの知識を広く浸透させるっていうところに、エビデンスをどうやって入れ込んでいくかというところでしょうか。
津野氏:
エビデンスは、もう少しその先だと思います。まずはパワハラという概念を知っておかないと、そもそも予防が必要であるとか、管理者教育が必要だということも思いつかないと思います。そのため、ハラスメントの基礎知識というのは普遍的に伝えていく必要があります。パワハラは問題だ、うちの会社でもちゃんと対策しましょう、となり、ではどうやって防止対策をやっていくか?という時に、初めてエビデンスが使えるようになると考えています。中小企業は、現段階ではまだその手前の状態なのではないかと思っていまして、ちゃんと中小企業でもパワハラ対策しなければいけないっていう機運が高まれば、初めてエビデンスを有効利用できるのではないかと思います。
稲尾:
パワハラに関して、業界によっての特徴はつかんでいらっしゃいますか?
津野氏:
パワハラの頻度が高い業界はありまして、そのひとつが軍隊系組織です。日本では自衛隊、警察、消防が該当します。あと代表的なのが、医療系です。対人的な対処が必要であったり、ミスが許されなかったりする業種であるという特徴があります。そういった業界だと、ミスをするとか、ちょっと枠から逸脱するとか、そういうことで人が攻撃する対象になりやすい、と言われています。軍隊系も、規律がしっかりしていて、ルールがしっかりしている、それに加え従順であることが求められます。そのため、ちょっとでも従順でないところがあると、それが容易に攻撃対象になってしまうのです。しかも、それが一見正当性があるように見えるのです。組織の和を乱すということが攻撃対象になるので、パワハラは起こりやすいと言えます。しかも正当性があるように見えるので抑止力が効きにくい、ということも特徴です。
稲尾:
ミスが許されないとか、上下関係が決まっていて、それに対して異論を言うのを許されないとか、外れてしまうことが絶対にダメだとされてしまうというのは、業務によって、それが必然性で、やらなきゃいけない部分と、そうではない部分の線引きもすごく難しいですね。そういう意味で、抑止力をどう根付かせるか。その辺はどうでしょうか?
津野氏:
職場によって、どこからがアウトでどこまでが許されるのかは違うので、その職場でのコンセンサスを得なければいけないのは前提となりますが、いじめのようなことはどの職場でも本来許されないものです。ただ、誰も注意できないのは、注意すると自分が排除されるとか、そういった恐怖があるのではないかと思います。そのため、風通しのいい職場を作っていくのが、一番の抑止力になると思います。おかしいな、これは行き過ぎじゃないかと思ったものを、声に出して言えるようにする、通告できる部署を作る、などです。健全な方法で教育や指導をするような組織になりたいのだとメッセージを従業員に継続して伝えるなど、根本的な意識改革が必要かと思います。
日本では人権侵害が海外ほど問題視されない。それが、問題。
稲尾:
ハラスメント全般にいえることですが、元気に能力発揮する権利、それは働く人の人権ということになると思いますが、それが制限されるのか、されないのか。組織のルールがあって、その組織のルールを守るためだったら、人権侵害も仕方がないというふうに考えるのか。いや、人権侵害はやっぱりダメなんだと。人権をきちんと守りながら、でも厳しい指導は必要だと考えるのか。この2つの軸は根本的に違うものだと私は思っているのですが、そこがなかなか浸透しないと、私がこの活動をしていて、一番悩ましいところです。その辺りをそれぞれの組織、あるいは一人ひとりがどう捉えているのだろう?ということに、私は関心があります。そのあたりはどうでしょうか?
津野氏:
その辺りは、研究でも全く触れられてない部分です。というのも、海外では人権侵害というのはあり得ないんです。そこはもう ‘あり得るかという議論さえない’ ので、そこには焦点は当たらないのです。ただ、日本だと、指導のもとだったら多少の人権侵害は許されるんじゃないか?という考え方があるように感じます。それがそもそもおかしいんです。人権侵害というのは、どんな立場であれ、どんな場所であれ絶対に許されないものなんです。ただ、学校の教育でも、理不尽な要求を教師がしたりして、それに慣れて育っていくという日本社会特有の風潮がありますよね。そのため、なんとなく一部分は許されるのでは、と受け取る側も考えてしまっているんです。そのため、問題視されないですけれど、本当は問題なんです。
本当は学校教育からやり直さなきゃいけないと思っていますが、社会人になってからでも、軍隊的組織であっても、人権侵害は絶対にダメなんだということを、トップがメッセージを出さなければいけません。例えば、アメリカの海兵隊はメッセージを出しましたよね。人権侵害があったとか、差別があった時に、「そういう差別はこの組織には要らない。そういう人がいるなら、いますぐこの組織から出て行け。出て行かないなら、二度とするな」と。このくらい強い言葉で言わなければ、従業員はトップが本気だということに気付けません。今の日本の組織だと、ほとんどのトップがここまでの強いメッセージを出せていないと感じます。「職場にパワハラがある」ということが当然のようであまり問題視されてないのが、そもそもの問題じゃないかなと思います。
下から上に、どんどん声を上げていく必要がある
稲尾:
そうですね。そういう意味で言うと、今までの認識、社会に合ったルール的なもの、暗黙の了解、空気みたいなもののバージョンアップが必要だと思います。
津野氏:
それについては、実は上からバージョンアップするのは難しいんですよね。どうしても、その人が持っている数十年間に渡る価値観は変えるのが難しいのです。なので、バージョンアップするなら下の世代からだと思います。下の世代が「これはおかしい」と言っていかなきゃいけないのです。今は個人の発信力というのがすごく強くなった時代で、ツイッターでつぶやいたことや、退職するときにこんなことを言われたということがすぐに広がって、すぐに企業が特定されて大炎上しますよね。例えば今、ブラック校則をなくそうというムーブメントが起きています。普通に考えて、下着の色を指定されるとか、教員が下着の色をチェックするなんて極めておかしいですよね。そのように、どういった条件でも人権を無視するのはおかしいので、それはそもそもしちゃいけないよね、ということをどんどん声を出していく必要があると思います。日本人は我慢し過ぎだと思います。
稲尾:
そうですよね。海外の色々な研究もされているから、海外と日本の比較みたいなのを見てみると、だいぶ違うなと思いますね。
津野氏:
特に、健康被害が日本は深刻に起きやすいと個人的に感じています。いじめやパワハラ自体はどこの組織でもどこの世界でも起きるものです。ただ、それを問題視しない傾向が日本は強く、なおかつ被害者側も我慢する傾向が強いと感じています。そのため、労災認定されるぐらいの精神障害発症まで至ってしまったり、自殺に至ってしまうというような非常にシビアな健康影響が出てしまっているというのが、日本の姿です。
例えば、アメリカならパワハラされたらすぐ辞めるか、訴えます。そのため、確かにパワハラが起きることはあるんですが、最小限のダメージで収まるし、むしろ上司の方が処分される傾向にあります。そういった自浄作用がありますが、日本は会社側が問題視したり被害者側が我慢したりすることで、パワハラ行為者である上司が処分を受けずにその会社にずっといたりと、自浄作用が起きにくい状態にあります。
稲尾:
その両方ですね。問題は問題なんだと捉える認識を高めることと、それをきちんと声を上げていくこと。声を上げるのもなかなか難しいですけど、でも、声を上げて、それをちゃんとキャッチして変えていくっていう意味では、最近の高校の校則が変わっていく様子を見ると、新しい動きとして希望があります。
津野氏:
もっと社会人でも声をあげていいと思います。おかしいと思うのであれば、それを声にすれば、他にも同じようにおかしいと思う人の賛同を得られるかもしれないですよね。それがパワーになり、会社側を動かす力になるかもしれません。
「パワハラ対策研究会」について
稲尾:
ありがとうございます。最後に、「パワハラ対策研究会」をこれから一緒にやらせていただきますので、その内容を簡単にご紹介ください。
津野氏:
5月からスタートして、5月、6月、7月と月に1回開催する研究会です。私の方からパワハラ対策に関するエビデンスについて話題提供し、それを企業内で対策に活かして頂こうという目的で開催します。企業の担当者の方も、日頃の業務で疑問に思っていることがあるのではないかと思います。それは科学的にも証明されているのかを知ることによって、より自信をもって取り組みをして頂けるのではないかと期待しています。例えば、個人的要因として、どんな人がパワハラを受けやすいのか、どんな人がパワハラをしやすいのか等、そのエビデンスが出ていますので、パワハラを受けやすい・やりやすい人というのを把握した上で対策ができるようになると思います。もうひとつ、職場の要因というのもあります。どういった職場でパワハラが起きやすい、起こりにくい、というのがありますので、それに関しては後半9月以降に、個人的要因を押さえた上で開催して、組織としてどう対応したらいいのかということを話していきたいなと思います。
稲尾:
個人要因は興味あります。
津野氏:
もちろん、個人を攻撃する=個人を非難する理由にはしていただきたくないですが、パワハラを受けやすい人の特徴や、パワハラをしやすい人の特徴がある程度わかっていると、そういった行為を受けたときに訴えやすくするためにはどうすれば良いか、声を出しやすくするためにどうしたら良いか、どういう配慮をしたらよいのかという話や、パワハラをしやすい人に対してはパワハラをしないためにどうしたらいいのか、どういう指導がいいのかという教育に結び付けて頂けるのではないかと思います。
稲尾:
予防的に自分ができることがあったら知っておきたいです。みんなパワハラを受けたくもないし、したくもないですものね。みんなが気持ちよく、頑張って仕事をしてみんなで笑顔で過ごしたいですから。もちろん厳しい面も当然仕事にはありますけれども、ピリッとした緊張感の中で、どこまで自分がチャレンジできるかという気持ちで、仕事に向き合っていきたいですね。
津野氏:
そうですね。例えば、パワハラをする人の特徴、なんでパワハラをしてしまうのかという原因、メカニズムがあることがわかっています。一様にパワハラはダメだという教育ではなくて、パワハラをどういう時にしてしまうのか、パワハラ的な言動をしたくなってしまう時にどうしたらいいのか、を知って注意しておくと、例えば人事異動の時、少し気をつけてその部分を見るとか、そういう対策が出来ると思います。そういった部分を企業に活かしていただくための材料を提供したいと思っています。
稲尾:
誰もが人間関係の中でイラっとしたり、ムカムカしたり、急にスイッチが入って怒ったりするときがあると思います。それはプライベートも含めて、誰もが無縁ではないですよね。そんなところにも参考になりそうですね。
津野氏:
私は誰もがパワハラをしうる・受けうる存在だと思っいます。それは事例でも研究でも明らかになっているので、そこに注意を向けるだけでも違うと思います。
稲尾:
個人もそうですけど、組織要因みたいなものも、皆さんすごく関心が高いと思います。先ほど特徴的な職種というお話もありましたが、それ以外にもいろいろありそうですね。
津野氏:
そうですね。どのくらいの業務量があるかとか、その辺もパワハラの起きやすさに関わってきますし、組織の風土そのもの、つまり組織文化としてどんな特徴があるのか?どういう組織だとパワハラが起きやすいのか?ということがわかっているので、自分の組織に当てはまるかどうかなども検討してもらえるといいと思います。
稲尾:
最新のデータをご紹介頂けるということですから、私たちも皆さんと一緒にディスカッションさせていただきたいです。生の現場を知っている人の声もすごく重要だと思っているので、本当にパワハラ予防するには、ぎりぎりのところでも何とか踏ん張って前に向いていけるには、というところを一緒に考えていく機会になるといいですね。
津野氏:
そうですね。私としては、研究としてわかっていることを把握していますけれども、そのエビデンスが現場の感覚とどのくらい合致しているのか?その現場としてその対策が本当にできるのか?というのは、未知数なところがあります。企業の担当者の方からは、それが確かに現場の感覚と合っているのか、いや実は別の現象がみられるのか等をお聞きしたいと思います。それを基に、もし日本独自の、例えば行為者の特徴などが事例から明らかになっていくのであれば、新たに調査をして、それを新たなエビデンスとして確立するというのも1つの考えかと思います。
稲尾:
研究の途中段階というふうに言えるかもしれないですね。一緒にその研究を進めていくという意味で、ハラスメントをなくして、企業成長に繋がるといいと思っています。そうのお手伝いにつながっていければいいかなと思います。今日どうもありがとうございました。
(2021年4月)