創立30周年記念コンテンツパワハラを生まない職場づくりのヒント

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パワハラを生まない職場づくりのヒント

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パワハラ禁止がパワハラを生む

労働局に寄せられた個別労働紛争相談※1の中でこの6年間「いじめ・嫌がらせ」の相談がトップを占めています。企業の内部に寄せられる相談もハラスメントが増加、とりわけパワハラの相談が多くなっていると聞きます。ではなぜこのようにパワハラが増加しているのでしょうか?正しく言えばなぜパワハラをされていると思う人が増えているのでしょうか。それはパワハラという言葉ができたからという話もあるでしょうが、たとえパワハラという言葉がなかったとしても人格を否定したり、無視したりするような行為は確実に増えていると感じられます。
厚労省はパワハラを①身体的攻撃 ②精神的攻撃 ③人間関係からの切り離し ④過大な要求 ⑤過小な要求 ⑥個の侵害と6つに類型化※2 しています。また同省のアンケート調査※3の「いじめ・嫌がらせ行為の累計別件数」を見るると精神的攻撃が抜きん出て多くなっています。一言でいえばパワハラとは何らかの力によって他の人の人格を傷つける精神的な攻撃行為ということができます。長年この問題に接して来た私が感じている変化は他者への積極的介入・攻撃によるハラスメントよりも、見えにくい陰湿なハラスメントが増加しているように思われます。失敗した時に大声で怒られることも辛いかもしれませんが、それよりもじわっといつまでも責められることの方が心理的ダメージは大きいことでしょう。それはたまたまの行為が否定されたのではなく、人格そのものを否定されたと感じるからではないでしょうか。残念なことにパワハラを行ってはならないという禁止を訴える教育が浸透したがために、管理者が抑制的になっていることが多く、その結果言いたいことが言えないイライラが募って陰湿なパワハラへとつながっているように思われます。
しかし組織の目標を達成し健全な職場環境を維持するのが管理者の仕事であるかぎり、部下にとって受け入れがたいことであっても言うべきことは言わなければなりません。そのためにはネガティブなフィードバックをどう行っていくかというコミュニケーション教育も同時に必要でしょう。そうすることで管理者のストレスは軽減し、嫌な気持ちをぶつけるというパワハラが減ってくるのではないかと思います。

不適切な目標設定が行為者を作る

また誰かが誰かにパワハラを行っているという個人的な関係性によって発生するパワハラよりも、職場全体がピリピリした雰囲気で、互いを排除しあうという風土がハラスメントを引き起こしていると思われるものも増えています。その要因のひとつは過剰な目標設定です。達成不可能な売上げ目標を掲げて、結果を出したものだけを評価していれば、数字を上げない人の意見は聞かない、足手まとい扱いするというハラスメントが発生することは容易に想像できます。またコールセンターや作業現場などでゼロミスを掲げていることがあります。そういう現場ではミスが発生することはリーダーにとってはあってはならないことであり、もしかしたらその責任を取らされ自分自身の存在が危うくなるような問題となりかねません。そのため必要以上に厳しい指導をし、それでもミスをする人がいればその人を排除したくなる心理が働くことでしょう。 このようなパワハラは組織の課題設定そのものを変えない限り、繰り返しパワハラは起きてしまうことでしょう。誰もが加害者にも被害者にもなる可能性を孕んでいるのです。
また、誰かが誰かを攻撃したとしても全く関与しない職場などもハラスメント行為を助長させてしまいます。ハラスメントにあたるような行き過ぎた行為があれば、それがエスカレートしないうちに本人のにフィードバックできる人間関係はとても大切です。
関係の質を高めれば思考の質が、思考の質を高めれば行動の質が、行動の質を高めれば結果の質が向上するという成功循環モデル※4にあるように、性急に結果だけを求めるのではなくまずその基盤となる関係の質を高めていくことがよい結果を生み出すことでしょう。
それは加害者を作らないばかりでなく、被害者であると感じやすい受け身な人を作らないことにもなるでしょう。

  • ※1. 平成29年度 個別労働紛争解決制度施行状況 厚生労働省
  • ※2. 平成28年度 職場のパワーハラスメントに関する実態調査 厚生労働省委託事業
  • ※3. 職場のパワーハラスメント防止対策に関する検討会報告書 厚生労働省
  • ※4. 成功循環モデル 元MIT教授 ダニエル・キム

(2019年3月)

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