ハラスメント相談窓口担当者への教育研修について
- Q当社では、ハラスメント相談窓口担当者への教育研修を定期的に実施しています。ところが新しく窓口担当になった50代の部長が「自分には経験があるから、そんな研修を受けなくても大丈夫、任せてくれ!」と自信満々です。少々心配なのですが、その人の経験を信じて任せてしまってよいものでしょうか。
- Aベテランの管理職が、ハラスメント相談窓口の担当者に任命されることは、珍しくありません。特に、管理職クラスの行為者に対する事実確認では、同等の職位の窓口担当者が行ったほうが、スムーズに進むでしょう。
ただ、「経験があるから大丈夫!」という、その部長さんの自信は一体どこから来るのだろうか、と少々心配になります。何故なら、ハラスメントの被害を受けた人や、そう感じている人への対応は、一般の人事相談や部下から業務上の相談を受けるのとは、異なった心構えやスキルが必要になるからです。
一般に部下や従業員からの相談では、将来への不安や業務量、業務内容に関する不満などについて話を聞くことが多いでしょう。しかし、ハラスメント行為を受けた人は、具体的に職場の誰かから自分が「傷つけられた」と感じており、そのことによって業務に支障が出ていることが考えられます。その苦しい思いを受け止めることなく、「こんな解決方法があるからがんばって。」などと、一般の相談を同じように安易にアドバイスなどをしてしまうと、「真剣にとりあってくれない」と怒らせてしまったり、被害を受けた人のダメージが更に大きくなったりすることがあります。
また、具体的なハラスメント行為がどのようなことなのか、事実確認を迅速に、しかも正確に行うスキルが求められます。これはただ相手の話を聞くだけでなく、相手の気持ちに寄り添いながら的確な質問を投げ、それを受け止める能力が求められます。これは専門的な教育研修を受講して、相談の受け方をある程度マスターしないと、なかなか難しいものです。私どもが実施している「ハラスメント相談員スキルアップ講座」の受講生のみなさんからは、受講後のアンケートで「こんなに難しいものだとは思わなかった」「何の知識もスキルもなく相談を受けていたら、間違えた方向に持っていってしまうだろう。今後は、そういうことが起きないよう気をつけて対応したい」との感想が多く寄せられています。
そして、何より会社の相談窓口の位置づけや権限、問題解決の手順について理解していない方が、自分の勝手な判断で事実調査してしまうと、知らないうちに会社のルールを逸脱してしまうことが考えられます。もしも、窓口担当者の対応が原因で、被害者が深く傷つき、そのことで会社を訴える、ということにでもなったら・・・。会社はもちろんのこと、窓口担当者の方のその後の人生にも、多大な影響が及ぶことでしょう。
ハラスメント問題と労災認定の関連も深くなっていることから、この問題に対する会社の対応は、今後ますます重要になっていきます。どんなに「経験があるから大丈夫!」と言っている人でも、会社のルールを知らなければ、会社の相談窓口としての役割を果たしたことにはなりません。「会社として、問題解決の手順や窓口の役割が決まっていますので、それを理解していただくためにも、窓口担当者研修を受けてください。」と、会社としてのスタンスを明確に伝えたうえで、教育研修の受講を勧めてはいかがでしょうか。
(2012年)
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