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ハラスメント相談の現場からVol.33 現実の加工の仕方
Vol.33 現実の加工の仕方
現実とは、真実とは、いったい何でしょうか?私たちは現実や真実を自らが受け入れやすくするために、独自の解釈を用いて「加工」を試みているのではないでしょうか。
分かりやすい例をあげると、目の前の鏡に映っているのは真の自分の姿であることにウソ偽りありません。鼻が高いか低いか、眼が大きいか小さいか、顔が丸いか四角いか、など細かく観察すると真実が次々と明らかになって、「あーぁ(嘆息)」な現実が突きつけられるかもしれません。しかし、私たちは、「どちらかというと愛嬌がある顔」などと都合よく「解釈」し、現実を「まぁ、こんなもの」と加工し、受け入れておおむね平穏に暮らしています。自分の鼻は世界標準より3.7ミリ低い、などという現実を直視することよりも、「これはこれで良し」と思った方が楽だから。これは生きていく上で不可欠な知恵でしょう。
一方、人間関係でしばしば遭遇する解釈・加工の工程は、もう少し複雑です。先日、某社人事部門Gさんから相談がありました。営業部門に所属するJさん(40代、男性)が、同じ部署内のQさん(30代、女性)へSNSで食事や旅行の誘いをしつこく繰り返すようになり、「断っているのに…」と、困り果てたQさんから通報が入ったとのこと。最初は業務上の事務連絡に使われていたSNSでしたが、次第に私的な内容に変わり、最近は休日も頻繁に受信するようになったため、怖くてスマートフォンを見ることができない、とQさんは訴えます。GさんがJさんに会って話を聞いたところ、Jさん曰く「Qさんが嫌がっているとは思わなかった」、「返信に『誘う相手を間違えていませんか?』という表現があり、それはQさんが謙遜して言っているのだと思った」と。この場合、真実はQさんが「断っても行為を止めないJさんを気持ち悪い、怖いと思うようになった」ことです。その結果、Qさんが「失礼にならないよう」気を遣いながら「これ以上、連絡しないで下さい」と必死に伝えても、Jさんは「Qさんの本音ではない」、「遠慮している」と、都合よく解釈していたのです。こうなると、解釈というより大きな「勘違い」です。たいていの場合、解釈は他者へ害を及ぼすものではありませんが、対人関係で起きるこうした解釈はまったく次元が異なります。セクシュアルハラスメント行為者が「相手は嫌がっていない、むしろ喜んでいるはず」などと堂々と宣言するのを見聞きする度、加工法のプログラミングミスを痛感するのです。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2017.11)
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