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ハラスメント相談の現場からVol.68 感情・感覚を口にするには
Vol.69 “ゴール”はいずこ?
コロナ禍終息の影すら見えず、さらなる感染拡大に不安がいや増すこの頃、「ゴールが見えない」という嘆息が聞こえてきます。“ゴール”とはいったい何なのでしょうか。コロナの場合、“有効なワクチン開発”が真っ先に頭に浮かびます。しかし、仮にワクチンが開発され、世界中隈なく行きわたったとしても、残念ながら私たちとウイルスとの戦いに大団円が訪れることがないのは衆目の一致するところです。
決断力と行動力では社内で右に出る者はいないと評されるA部長は“見切り発車”がお得意で、日頃から「ゴールまでたどり着けないヤツはウチには要らん」、「とにかく結果を出せ」と公言してはばかりません。先日も「Bは期待していたのにダメだな」、「Cはそもそもこの業務に向いてない。外すか…」と部長の懐刀と評されるDさんに話したばかりです。こうした発言のベースには、「各人が自分に与えられた課題(目標)を達成できるかどうか」という、実に分かりやすい基準があります。仕事と名の付くかぎり、求められる基準をクリアし、課題を達成しなければならないのは必定。しかし、課題はゴールなのでしょうか。
Bさんは石橋をあちこち叩きまくった挙句、一歩一歩踏みしめながら慎重に渡るタイプです。疑問に思ったことや関連分野について細大漏らさず調べ、自分の課題にどう生かすか、次の課題につながる素材があるとすれば…、など考えている時間が長いのです。この春まで所属していた部署では、逆に情報収集力、着想力が評価を得ていました。Cさんは異業種からの転職組。やる気、持久力は人一倍あるのですが、仕事も人間関係も「さて、これから!」と張り切って腕まくりした途端、コロナ禍でリモートワークになってしまったのです。BさんもCさんも仕事の本題に加え、それぞれが取り組まなければ先へ進みたくても進めない未解決の課題を抱えている現状が見えてきます。
仕事の達成は“結果”、背景に抱える未解決の事柄を含めて達成への道のりは“プロセス”。Aさんの辞書には“結果”しかありません。それも“ゴール”という表現を用いて先回りし待ち構えているので、Aさんの満足するタイムで辿り着けない部下は即、失格です。区切りや目途を設定し、確認しながら仕事を進める必要はあるでしょう。登山で言うなら「今、何合目まで来ているのだろう」という道標です。さらに肝心なことは一歩一歩の足の運びそのもの(仕事ぶり)、“プロセス”を観ることではないでしょうか。Aさんは「〇合目」の道標を“ゴール”と考え、足の運び、そこから見える特性や課題をまったく無視して最終評価を下すのですから、部下はたまったものではありません。たとえ登頂を無事に果たしたとしても尾根はその先も脈々と続いていることを思うと、私たちはつねにプロセス、発展途上にあることを忘れてはなりません。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2020.12)
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