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ハラスメント相談の現場からVol.40 “感覚”に蓋をしないで
Vol.40 “感覚”に蓋をしないで
ハラスメント関連のニュースが連日、巷間で取り沙汰される今日この頃です。17年前に「パワー・ハラスメント」の語を造り、以来、一貫してハラスメント問題の対応や解決に関わる仕事をしている私たちには、気になることがあります。
ハラスメント案件の相談を受けた時、複数の当事者から話を聞かせてもらうことがあります。当然のことながら、同じ体験をしていても受けとめ方やとらえ方は人それぞれ。そのことを十分に踏まえた上で、明らかに「クロ」と判定される「分かりやすい」事案(たとえば、パワハラでは人前で暴力を振るう、暴言を吐く、セクハラでは職務中公然と猥褻な話をする、など)があります。
暴力行為が問題になった案件の事実確認調査でのこと。被行為者は「暴力と言っていいのかどうか、よくわからないのだけれど…」と口ごもりながら前置きし、「バランスを崩して倒れてしまうほど」上司から強く胸を押されたエピソードを語ってくれました。「暴力を振るわれた」との認識の邪魔をしている理由としては、「上司との関係を崩したくない」、「“その程度のこと”にはもう慣れっこになっている」、「“その程度のこと”で目くじら立てるのはみっともない」、「相談したり通報したりすると面倒なことになる」などなど。理由は何であれ、「こんなことは暴力のうちに入らない」との認識をもつことで自分を落ち着かせようとし、それを繰り返すことによって、暴力に対して「おかしいのではないか?」というごくごく自然に沸き起こる抵抗感や違和感を押さえ込んでしまうのです。
セクハラ案件でも同様のことが見受けられます。職場で男性が卑猥な話を昼間からしていることについて、女性社員の一人は「仕事に集中して、聞かないようにすれば問題ない」と苦笑しながら、独自の解決方法を話してくれました。
これらが醸成されて組織風土が形成される、と考えると恐ろしいことです。
“鈍感力”には、もちろん非常にポジティブな側面もありますが、ここでは百害あって一利なし、です。自分の感覚、爽快感や不快感に蓋をすることなくきちんと向き合い、早期に“問題”解決することで、周りとの無用な不調和を回避することができるのです。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2018.06)
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