- Home
- ハラスメント情報館
- ハラスメント相談の現場から
- Vol.46 職場に漂う緊張感の正体は?
ハラスメント相談の現場からVol.46 職場に漂う緊張感の正体は?
Vol.46 職場に漂う緊張感の正体は?
年末年始、冬季休暇といえば、「あー、温泉にでも行って、溜まった疲れをゆっくり癒したいなぁ」と考える人も多かったことでしょう。”お風呂に浸かること” イコール ”リラックスすること”、ならば、日頃、仕事でさまざまな業務に追われる生活は緊張に満ちみちたものであるに違いありません。
某企業で複数の営業所を統括するA氏は、席の温まる暇もなくあちこち飛び歩いています。エリアはさほど広域ではないので定期的に各営業所へまんべんなく顔を出すことにしているものの、営業所員一人ひとりと密に連絡を取り合うには電話やメールに頼るほかありません。
実践派で面倒見の良いA氏は、ついつい手出し口出し、過干渉になりがち。この春から全体の営業目標が上がり、A氏は成績が気になって仕方がありません。A氏の仕事観は ”成果を上げるには緊張感が大事” というもの。以前にもまして「もっと緊張感をもって業務に励んでもらいたい」とメールで檄を飛ばし、「ピリッとしろ、緊張感が足りん!」と、電話口で喝を入れるようになりました。
A氏が営業所へ足を踏み入れると、どの営業所もシンとしています。人が出払っているからではなく、A氏の来訪に合わせ普段よりも在席者が多いにもかかわらず、皆、黙々と作業の手を緩めません。「A氏が部屋に入るだけで『今日は何を怒られるのか?』と空気が張り詰めて顔が上げられない」と所員たちは異口同音に言います。「Aさんの指導は減点法。できていないこと、ダメなことを見つけるのに長けている」、従って、「皆、文句を言われないようAさんの顔色を見ながら仕事をするので、やり甲斐も達成感もない。業務にも集中できません」とのこと。
果たして、これはA氏が望んでいることなのでしょうか? A氏は期せずして職場に、それもA氏と所員たちとの関係に緊張感を与えてしまっていたのです。仕事に向かう姿勢にはある程度緊張感が必要でしょうが、それはピーンと細い糸が弛みなく張り詰めているような危うさと隣り合わせの緊張感ではなく、しっかり中身の詰まった果実のような充実感や集中力を生み出す、適度に緊張した状態、と表現できるものかもしれません。
自分がやり甲斐や達成感を感じるのはどのようなときか、能力発揮や集中ができるのはどのような環境か、湯船に浸かってほぐされつつ思いを巡らせてみてはいかがでしょうか。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2018.12)
その他記事
- Vol-74.視線をちょっと上げて
- Vol-73.行動変容は“人間改造”?
- Vol-72.マル化するバッテン
- Vol-71.“普通”を普通に使うには?
- Vol-70.“行動変容”の基にあるもの
- Vol-69.“ゴール”はいずこ?
- Vol-68.感情・感覚を口にするには
- Vol-67.「“今、ここ”を生きる」とは?
- Vol-66.『隙間』は埋めないで!
- Vol-65.“思い通り”からの解放
- Vol-64.ハラスメントフリーへの王道
- Vol-63.新型ウイルスの3つの挑戦
- Vol-62.彩り豊かなインナーダイバーシティ®の森へ
- Vol-61.不安への最善策
- Vol-60.”業務指示“を見直してみませんか?
- Vol-59.パワハラ防止法とハラスメントフリーへの道
- Vol-58.第三者ができること
- Vol-57.伝言文の危うさ
- Vol-56.ハラスメント潰しとハラスメントフリーの “微妙な関係”
- Vol-55.会話のボタンを掛け違えると?
- Vol-54.自己報酬と他者報酬
- Vol-53.AIに逆立ちしてもできないことは?
- Vol-52.VUCA時代の部下対応とは?
- Vol-51.自らのもつパワーを真っ当に認識しよう
- Vol-50.春は未知との遭遇
- Vol-49.働き方のリフォーム
- Vol-48.押し戻す力、使っていますか?
- Vol-47.「白」か「黒」か、ではなく
- Vol-46.職場に漂う緊張感の正体は?
- Vol-45.意識は世に連れ?
- Vol-44.“聴く耳”を磨きましょう
- Vol-43.“ハラスメント”事情あれこれ
- Vol-42.日頃のイライラに“マントラ”を処方してみませんか?
- Vol-41.感情は豊かな表現の素(もと)
- Vol-40.“感覚”に蓋をしないで
- Vol-39.〇〇ハラスメントっていくつあるの?
- Vol-38.ドライバーチェック、してみませんか?
- Vol-37.「頑張り」の対極は?
- Vol-36.先回りの功罪
- Vol-35.“完璧にやれ”の功罪
- Vol-34.“急げ”の功罪
- Vol-33.現実の加工の仕方
- Vol-32.「易しい上司」とは?
- Vol-31.言い訳と状況説明の違いは?
- Vol-30.情報社会における“通報”
- Vol-29.“得意分野” の落とし穴
- Vol-28.言動は一生、変えられない?
- Vol-27.デリケートな問題への対応法
- Vol-26.我がフリを見て何を想う
- Vol-25.“場を活かす力”とは?
- Vol-24.“良かれと思って”がハラスメントに
- Vol-23.“パワハラ加害者”という被害者を生まないために
- Vol-22.感情の動きは大切なサイン
- Vol-21.敵も味方も自分の内に
- Vol-20.“叱る”も“責める”も逆効果
- Vol-19.一人ひとりの潜在能力を開花させるには
- Vol-18.人の心をつかむコミュニケーション
- Vol-17.どうして○○○○なんだ?
- Vol-16.匂いか、臭いか
- Vol-15.健全な職場で発揮される正当なパワー
- Vol-14.職場の“当たり前” を見直しませんか?
- Vol-13.内弁慶で損していませんか?
- Vol-12.社内行事は誰のもの?
- Vol-11.あなたの“口癖”からは何が見えますか?
- Vol-10.“出る杭”を打たないで!
- Vol-9.メール対応の落とし穴に要注意!
- Vol-8.“健全な職場環境づくり”に果たすべき企業の役割は?
- Vol-7.あなたの部下指導は北風、それとも太陽?
- Vol-6.ひんやり職場の温め方は?
- Vol-5.“スローガン”の裏にある悲劇
- Vol-4.部下との会話、手抜きしていませんか?
- Vol-3.“逃げ道”の風通しは良いですか?
- Vol-2.“井戸端会議”はお嫌?
- Vol-1.“パワハラ”と“適正な指導”の境界ってどこにあるの?