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ハラスメント相談の現場からVol.51 自らのもつパワーを真っ当に認識しよう
Vol.51 自らのもつパワーを真っ当に認識しよう
一国会議員の発言が外交問題に発展したり、高齢のドライバーによって悲惨な事故が引き起こされたりしています。こうしたニュースを見聞きするたびに、私たちは、自らの役割や立場に対する自覚が甘いのかもしれない・・と懸念せずにいられません。
某社広報部長のA氏は先日、社内でパワハラ研修を受講した際、「自分には無関係の話だ」と多寡をくくっていました。「自分は大丈夫(自分の行為はハラスメントになぞ該当しない)」、なぜならば、部下のミスを見逃さず指摘し、時として厳しく叱責することはあるが、それは「あくまでも必要かつ適正な業務指導の範囲内だ」という揺るがぬ認識があったからです。自分がかつてそうであったように、部下も遠くない将来、A氏の指導を「あれは、キツかったがありがたかった」と感謝の念とともに思い出してくれる日が来るに違いない、とどこかで期待すらしていました。だからこそ、コンプライアンス担当責任者B氏に呼び出され、「部下指導に行き過ぎた点があったのでは」と切り出された時には青天の霹靂、驚きと憤りを隠せませんでした。A氏の対応によって部下が萎縮し、思考停止に陥った挙句、心身の健康まで損ねるに至った、と伝えられても実感がわかず、頭が真っ白になりました。A氏は、周囲に与える自身の“影響力”について、言い換えれば自分のポジションのもつパワーについて、まるで自覚がなかったのです。若い頃と同じように深夜まで部下たちを相手に酒を酌み交わし、世代の垣根は取り払われていると信じていました。「意見はどんどん言うように」、「何でも質問しろ」と言いながら、A氏がいつも会議を仕切り、一方的に話していることに気づいていませんでした。
ハラスメント行為者と無自覚な国会議員と高齢ドライバーの共通項を拾うとすれば、客観性を欠いた自己認知と言えるかもしれません。また、周囲からの助言や進言が本人の耳に入っていきにくい点も、よく似た特徴です。
組織内で重責を担う人間のもつパワーは使い方一つで、周囲を窮地に追い込むことがあります。自らのもつパワーを冷静・客観的に分析してとらえ直し、周囲がより良くなるような影響力をもたらしていこうではありませんか。
(株)クオレ・シー・キューブ 志村 翠 (2019.06)
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